最近は「ハイレゾCD」(「MQA-CD」とも呼ばれます) といったものも登場していて、CDとの互換性を維持しながらも、「ハイレゾ」とのこと。
「MQA」とは「Master Quality Authenticated」の略らしいのですが、「Master」って言葉は、オープンリールテープやレコード盤の時代から、高音質をアピールするものには、よく使われる「キーワード」ですね。
後学の意味もあって、ユニバーサルミュージックから2018年6月20日に発売された¥1,000の「体験サンプラー」 (生産限定盤) を購入して、聴き比べてみましたが、管理人には差が判りませんでした。但し「MQAデコーダーなし」での比較ですので当然かもしれません。
「従来CD」と「MQA-CD」に同じ曲を収録し、2枚合わせて「体験サンプラー」として発売しているのですから、リリースする側は「皆さん、どうぞ聴き比べてください」と、自信をもって発売しているのだとは思いますけどね.....
また、同時期に発売された、「ハイレゾ名盤シリーズ」100タイトルのひとつ、スティービーワンダーの「Key of Life」の「ハイレゾCD」版も購入しました。(これも「生産限定盤」だったので、ついつい買ってしまいました、全く懲りないですね.....)
「Key of Life」は、「LP」や「CD」「ブルーレイディスク・オーディオ」でも持っていますので、安価に「MQAデコーダー」が入手出来るようになったときに、聴き比べてみたいと思っています。
「体験サンプラー」「Key of Life」とも「生産限定盤」ということは、これから先、音楽ファンから広く支持されるかどうかは不透明で、メーカーでも「手探り」状態なのでしょうか?
あるいは、テレビショッピングなどによくある「番組終了後30分以内限定」みたいに、迷っているお客さんに「早く購入してもらう」手法なのでしょうか?
あくまで、管理人ひとりの妄想ですけど、もしかしたら「体験サンプラー」というのは、MQAに対応したデコーダーを普及させるための起爆剤として、戦略的な価格で発売されているのかもしれません。
「体験サンプラー」を買って聴き比べてみたものの、違いがよく判らす、「やっぱり、MQAに対応した機器じゃないと、違いが判らないのかなぁ?」と考え、「体験サンプラー」購入者の何%かが「MQA対応機器の購入」に踏み切ることを見込んだ戦略であって、盤の売り上げでは「赤字」でも、「MQA対応機器」の売り上げで取り返すので、トータルでは「黒字」みたいな.....
「ハイレゾCD」は、現在は「ワーナー・パイオニア」からもいくつかのタイトルが発売されています。
高価な「MQA対応DAC」を既にお持ちの方が見たら、「全然音が違うのに、何をバカなことを言ってるんだか、早く買えばいいのに.....」と呆れられていると思いますが。
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さて、音質の違いについては、「耳の肥えた方」「高域が十分に聴こえる方」、あるいは「高性能な機器をお持ちの方」にお任せするとして、ここでは、どうしたら「CDとの互換性を維持したハイレゾ」なんて、魔法のようなことが出来たのか?について考えてみたいと思います。
(「折り紙」にも例えられていますが、頭の弱い管理人には理解できないんです.....)
過去にはCDに20~24bit相当のデータを収録したとされる「HDCD」というものもあり、それがヒントになるのではないかと、「HDCD」に関する「Wikipedia」の記事を読んでみましたが、管理人は2~3行読んだだけで、頭の中のメモリーが一杯になってしまって、さっぱりかんぷんです。
「HDCD」に対応したデコーダーが内蔵されたプレーヤーで「HDCD」を演奏すると、表示パネル内に「HDCD」が現れました。
なお、ディスクに「HDCD」の表示がなくても、「実は、HDCDで記録されている」というものもあるようで、管理人が気が付いている限りでは、坂本真綾さんの「ループ」(Victor VICL35791、2005年5月発売) がそうでした。
「Windows Media Player」にも、「HDCD」に対応したバージョンがあり、「HDCD」でエンコードされたディスクを再生すると、左下に「HDCD」が表示されます。
「HDCD」でないディスクでは「HDCD」は表示されません。
「Windows7」上で動いている「Windows Media Player」のこのバージョンは、「HDCD」を認識していると思われます。
高音質がアピールされたHDCDですが、HDCDデコーダを内蔵したプレーヤーやDAC/AVアンプなどを使えば、効果はあるのかもしれませんが、パソコンの内蔵スピーカーで聞いている限りは差は判らないでしょうね。
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さて、ここからは管理人が素人なりに「ハイレゾCD」を理解しようとした考察です。
ますは、「ハイレゾCD」を再生したときの「S/PDIF」(デジタル音声出力) の波形です。
「S/PDIF」というのは、「SONY / PHILIPS Digital InterFace」のことで、CD登場時には付いていなかった端子だと記憶しています。
後にBS放送 (当初のものは、映像は「アナログ」、音声は「リニアPCM」でした) が登場し、BS放送のサンプリング周波数 32kHz / 48kHz
にも対応した「D/Aコンバーター」を内蔵した「プリメインアンプ」が登場した頃から付くようになった端子かと思います。
一本の信号線で「Lch」「Rch」交互にデータを送っていますから、サンプリング周波数が44.1kHzの場合、44.1kHz x 2= 88.2kHz の周期でデータが送られています。
これは「PAUSE」を掛けたとき。
S/PDIFでは、「BMC」(Biphase Mark Code)という方式でデータが送られています。
ビデオ信号に見られるような「同期信号」とかがなく、「0」と「1」だけで通信をする場合、ずっと「0」が続いてしまうとタイミングが取り辛くなるので、「Low」のときは「00」または「11」、「High」のときは「01」か「10」で表し、「0」が2つを超えて続かないようなルールになっているのでは?と推測しています。
この信号を「MQAに対応したD/Aコンバーター」に繋げば「ハイレゾ再生」が出来ると云われていることから考えると、この信号の中にハイレゾ成分も含まれていることになりますが、信号は「44.1kHz / 16bit」と思われます。
16bitデータの後には、付加情報のための「4bit」があります。
16bitデータの手前にも「8bit」分のオーディオデ-タ用の領域があり、更にその手前には「プリアンプル」と呼ばれる「4bit」のデータがあります。
「プリアンプル」にだけは「0」が3つ続くようなデータがあって、これを検出することで「データの先頭」を見つけたり、「L」「R」の識別をしているのだと思われます。
(詳しいことが知りたい方は、「日本規格協会」のWebサイトにある「デジタルオーディオインターフェース規格の国際標準化」という記事をご覧になってみてください。)
DVD-Videoでは、その「8bit」分のオーディオデ-タ用の領域も活用されているものがあり、「48kHz/24bit」で収録された音声だと、こんな感じ。
CDを再生したときの「S/PDIF」波形とは違うことが判りますよね?
(なお、DVD-Audioですと、S/PDIFにはダウンコンバートされて出力される場合があるようです)
これは、「PAUSE」時。
これは「48kHz/20bit」で収録された音声を再生したときの「S/PDIF」出力
これらの波形から、「ハイレゾCD」は、やはり「16bit」のデータであろうと思われますが、「44.1kHz / 16bit」を「リニアPCM」で収録してあるのであれば、高域の上限は20kHz程度でしょうし、2の16乗
= 65536段階の階調が収録でき、ダイナミックレンジは 20 x log(65536) = 96dB (厳密に言うと、もうちょっと大きくなるようですが.....)
が上限と考えられ、最大音量から-96dB以下の信号は収録できないはずです。
一方で、MQAについては高域成分を「-120dB以下」の領域に収録していると説明されています。
さて、ここから先は「管理人の想像」であって、誤っている可能性も「大いにアリ」ですが.....
昔、カセットテープが全盛だった頃、テープに録音した場合、確保できるS/N比は「60dB程度」でした。
大きな音で再生していると、「曲間」などでは「テープヒス」と言われる「シャーー」というノイズが気になる場合があったのですが、そこに「dbx」など音声信号を「圧縮/伸張」できる機器を組み合わせ、「ダイナミックレンジを圧縮して録音
/ 再生時に伸張」することで、テープヒスノイズを抑え込み、100dB程度のダイナミックレンジとS/N比が実現できたんですね。もちろん音質に全く影響を与えなかったわけではないのでしょうけど.....
これと似た様なことをデジタルの世界で行えば、16bitの信号を10~12bit程度に収録することは可能では?と思います。
また、全体を縮めなくても、LSB (最下位ビット) に近い部分だけを縮めるといったことも可能かと思います。
但しこれは「可逆変換」ではなく、「非可逆変換」であって、信号のディテールは (検知できない程度なのかもしれませんが) 失われます。
その空いたところに、20kHz以上のデータを充てるわけです。
かなり昔に録音された往年の名盤であれば、下の波形に示すように、20kHz以上が「ガッツリ」入っているわけではないので、20kHz以下の音声信号のように16bit分のダイナミックレンジを確保する必要はなく、数ビットあれば足りそうに思えます。
下の図はその一例で、1976年に発売されたスティービー・ワンダーの「Key of Life」(LP) を演奏したときのスペクトラム。
累積させると「プチッ」といったスクラッチ音も含まれてしまいますので、これは「瞬時値」ですが、この図は、本サイト内で「ハイレゾオーディオ」の「20kHz以上が入ってる?」のページの最初に載せた図と同じものです。
音量が大きいときは、「LSBに近い」レベルが「20kHz超成分をエンコードとしたもの」に置き換わっていても、検知できない一方で、音量が小さく「LSBに近い」レベルの時は、20kHz超のレベルは更に小さくなっているわけですから、そういった時には「20kHz超成分を入れずに、20kHz以下の成分に対して16bit全部を割り当てても大丈夫」といった具合に信号のレベルに応じて、時々刻々と処理方法を変えているのかもしれません。
こういった処理を行った音声は、「PCM」のルールに則ったデータではあっても、「リニアPCM」とは云えなくなるとは思いますが、20kHz以上が聴こえる方にとっては、こちらのほうが好ましく聴こえることは「有り得る」と思います。
「圧縮/伸張している音声」と聞くと、リニアPCMよりも劣っているようにも思えますが、例えばテレビ放送で考えると、「地アナ」の頃は「非圧縮の480i」で、1チャンネルが占める帯域は6MHz。
「地デジ」になってからは、「圧縮した1080i」で運用されることが多いのですが、これも1チャンネルが占める帯域は6MHzで、「占有する帯域幅は同じ」かと思います。
「圧縮した映像」では、圧縮映像特有の「ブロックノイズ」が見えたりもしますが、総じて云えば「圧縮した地デジの1080i」よりも「非圧縮の地アナの480i」のほうが高画質と感じる方はいらっしゃいませんよね?
「帯域6MHz」という制約条件の中では、多くの方が「圧縮した1080i」の方が高画質に感じるのと同じように、「44.1kHz / 16bit」という制約条件の中では、「リニアPCM」で収録した通常のCDよりも、「ハイレゾCD」のほうが高音質に聴こえるのかもしれません。
(管理人のように、加齢により15kHz以上が聴こえにくくなっている場合には、高音質に感じられないかもしれませんけどね.....)
但し、現状では「MQAに対応したD/Aコンバーター」で安価なものが無いようですので、管理人にとっては「ブルーレイディスク・オーディオ」+「ブルーレイレコーダー」のほうが身近なものに思えます。 ( ←あ、これを聴いても、管理人には違いが聴き取れなかったのですがね.....)
なお、ここまでの説明は、「どうやってCDとの互換性を維持したハイレゾが実現出来たのか」を理解できたような気持ちになるための、管理人の「勝手な想像」ってゆうか、「妄想」です
(笑) 。
「こんな風にすれば、出来ないこともないかな?」と管理人が一人で納得して「モヤモヤ感」を「スッキリ」させているだけで、実際には、管理人には到底理解できないような「もっともっと遥かに」高度な処理が行われているものと思われます。
この先、何か新しいことが見つかったり、知見のある方から「とてもわかりやすい御指導」を頂ければ、Updateします。
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余談ですが、「ハイレゾCD」と似た言葉に「ハイレゾCDラジカセ」というものもあります。
前者は、レコード会社にある「マスターテープ」にまで遡って、20kHz超の音をCDの中に収録できるような仕組みを考えたもの、後者はカセットテープなどの音をベースに「アップコンバート技術」によって、20kHz以上の音を生成しようとするものと理解していますが、どちらが優れているのかは一概には言えません。
「アップコンバート技術」は、「ハイレゾCD」版がリリースされていない場合には有効な手段ですし、そもそも20kHz以上が再生されることで高音質に感じるかどうかは、加齢で15kHz以上が聴こえにくくなっている管理人には、よく判らないんですよね.....