ハイレゾCD (3)

 「MQAの特徴」として更には、「時間軸解像度 (音のにじみ) が、192kHz/24bitのリニアPCMよりも少ない」ということも云われており、なぜそんなことが出来るのか、管理人なりに考えてみました。

 

 まずは、「44.1kHz/16bit PCM」で録音されたテストCDに収録されている「1kHz (厳密に言うと、1002.27Hz) の矩形波」をCDプレーヤーで再生してみると、こういった波形が出力されます。
 再生された波形は矩形波ではなく、波を打っていますが、これは「故障ではない」と思っています。

 

 

 1kHzの矩形波というのは、1kHzの正弦波(基本波)の上に、基本波の1/3の振幅を持った3kHzの正弦波、基本波の1/5の振幅を持った5kHzの正弦波、基本波の1/7の振幅を持った7kHzの正弦波、基本波の1/9の振幅を持った9kHzの正弦波.....が重なった波形です。非常に高い (厳密に言うと無限に高い) 周波数成分を持っています。
(詳しいことは「フーリエ級数展開」でググって見てください)

 

 

 まずこれは、1kHzの正弦波。

 

 

 そこに、振幅が1/3の「3次高調波(3kHz正弦波)」を重畳したときの波形。

 

 

 これは、更に、振幅が1/5の「5次高調波 (5kHz正弦波) 」を重畳したときの波形ですが、徐々に矩形波に近づいています。

 

 

 CDでは20kHzあたりが上限ですので、1kHzの19次高調波 (19kHz正弦波) までを重ねた波形が以下ですが、CDプレーヤーの出力波形は、これとよく似た波形になっていますよね?

 

 DVD-Videoでは、96kHzサンプリングまで可能で、44kHzあたりまで伸びていたようですから、43次高調波まで重畳してみましたが、さらに矩形波に近づきました。

 

 「CHESKY RECORDS」から発売されていた「THE SUPER AUDIO COLLECTION & PROFESSIONAL TEST DISC 」(CHDVD171) に96kHzサンプリングの1kHz矩形波が収録されており、それを再生したときの音声出力波形がこちらですが、上の波形にかなり近いですよね? 

 

 

 

 音の世界では、波形が急激に変化する手前の「ヒゲ」は「プリエコー」、後の「ヒゲ」は「ポストエコー」とも云われるようですが、プレーヤーによっては、下の写真に示すように、「本来の音よりも先に出る」プリエコーを抑えることに重きを置いていて、プリエコーは更に抑えられ、ポストエコーはもうちょっと大きくなっているものもあります。
(96kHzサンプリングの1kHz矩形波を再生したときの波形) 

 

 どちらが高音質なのか?といった高級な質問には、耳の肥えていない管理人には答えられません (笑) 。

 なお、映像の世界では「エコー」とは呼ばず、手前を「プリシュート」、後ろ側を「オーバーシュート」、あるいは前後合わせて「リンギング」と呼ばれることもあります。
 帯域が限られている以上、プリシュートもオーバーシュートも全く無い矩形波というのは無理な話で、「プリシュートとオーバーシュートが同じくらい」で、「より小さい」ほうが、見やすい映像になるように思います。
 また、プリシュートもオーバーシュートも全く無く、角が丸くなっているような応答では、「ねむい画質」になってしまうと思います。 

 

 

 192kHzでサンプリングした「ハイレゾ」だと、88kHzあたりまで再生可能となり、1kHz矩形波の87次高調波 (87kHz正弦波) まで重畳してみました。
 96kHzでサンプリングした波形よりも更に矩形波に近づいてはいますが、それでも完璧な矩形波ではありません。
 (管理人は「192kHzでサンプリングされた1kHz矩形波のデータ」を持っておりませんので、ここではExcel上での計算値のみです)

 

 

 

 さて、MQAですが、日本オーディオ協会のWebサイトにある「JAS Journal 2015 Vol.55 No.6 (11月号) 」の一部と見られる記事に拠れば、周波数特性をこんな風にしているものと推測されます。
 (そのまま掲載すると著作権的に具合が悪そうですので、ここではWeb上のグラフから値を読み取って、再度グラフ化しています。正確な特性を知りたい方は「日本オーディオ協会」のWebサイトを参照ください)

 

 20KHz以上の高域が緩やかに減衰したこの特性ですが、1kHzの正弦波の上に、1/3の振幅を持った3kHzの正弦波、基本波の1/5の振幅を持った5kHzの正弦波.....を重畳していくのではなく、更にこの特性で減衰 (重み付け) させた高調波を重畳させていくと、下のような波形になります。
 MQAはDSDマスターを352.8kHzでサンプリングしているようですから、ここでは161kHzの高調波まで重畳してみました。
 

 

 「ヒゲ」のような成分は、更に減っているように見え、水平方向は 0.1ms/div = 100us/divですから、「ヒゲの幅」は 10us程度と考えられ、MQA-CDの資料で云う「音のにじみが少ない」とは、これを指すのでは?と管理人は考えています。
 なお、云うまでも無いことですが、MQA-CDでこの過渡応答を得るには、MQAに対応したデコーダーで「20kHz超の帯域を復元して再生する」ことが必要です。「折り畳んだもの」を戻したときの話です。

 

 でも、「重み付け」をせずに、1kHzの正弦波(基本波)の上に単純に、基本波の1/3の振幅を持った3kHzの正弦波、基本波の1/5の振幅を持った5kHzの正弦波、基本波の1/7の振幅を持った7kHzの正弦波、基本波の1/9の振幅を持った9kHzの正弦波..... と161次の高調波までを足していくと、こんな波形になります。

 

 なお、Excelのワークシート上で計算しているだけで、基本波に対する位相の変化 (群遅延) については考慮していませんし、「MQAでエンコードした1kHzの矩形波」というのも、手元にはありませんので、あくまで机上の計算だけの話です。
(フィルターを通して周波数特性を変化させれば、基本波に対して各高調波の「時間的なズレ」も変化すると思われますので)

 

 自然界から発生する音で矩形波が発生するわけではないので、単純に「矩形波応答が優れていること=高音質」ではないと考えますが、「MQAの特徴」として、CDよりも大幅に「音のにじみ」が軽減できそうなことは理解できたような気がします。
 でも、「どうやってCDを超える音が、CDに収録できたのか?」という管理人の「モヤモヤ感」をスッキリさせるための考察であって、ホントは全然違っていても、責任は持てません (笑) 。

 こういった波形を見ると、「ある周波数まではフラット、その先はバッサリ」という特性だと、どうしても「トゲのある波形」になってしまうようで、20kHzあたりから上をちょっとづつ落としていったほうが、「トゲの少ない」素直な波形になるのかもしれません。

 もしかしたら「MQA-CD」では、「192kHzでサンプリングしたリニアPCM音声」でも得られないような音質が期待できるのかもしれませんけど、現在販売されているMQA対応デコーダーは、管理人にとっては「高嶺の花」で、購入を検討する対象にはなりません (泣) 。
 「MQA-CD」が、「オーディオマニア」だけにでなく「音楽ファン」に幅広く支持されるためには、「デコーダーの低価格化」と「数多くのレコード会社からリリースされていく」ことが必要かと思います。

 ちなみに管理人が「最初に買ったCDプレーヤー」は、1985年頃に発売されたLo-Dの「DAD-450」、「最初に買ったDVDプレーヤー」は、2000年頃に発売されたPioneerの「DV-525」で、どちらも「¥50,000」前後の価格だったと記憶しています。
 後者では「PCM 96kHz/24bit」で収録されたソフトの再生が出来ましたし、「PCM 192kHz/24bit」まで対応したDVD-Audioプレーヤーでも、¥100,000以下で購入できるものがあったと思います。
  管理人の持っている「Pioneer製 DV-S747A」は、DVD-AudioにもSACDにも対応していて ¥99,800 (税別) だったかと思いますが、管理人はヤフオクで¥10,000程度で入手したように記憶しています。

 

 なんて思っていたら、MERIDIAN AUDIOから、CDプレーヤーと接続してハイレゾCDを楽しめる「Meridian 218」というモデルが発売されたようで、日本国内では日本正規代理店である「ハイレス・ミュージック株式会社」で扱われています。(2018/11/20発売、¥125,000税別)
 MERIDIAN AUDIO社からは、これまでも「MQA-CD」対応した機器がいくつも発売されていましたが、「ハイエンド」っぽい製品が殆どで、管理人には手が届きそうにありませんでしたが、「¥100,000ちょっと」あたりまで降りてきました。
 でも、かつての「Dolby NR」みたいに幅広く普及するには、「デコーダーだけで、¥128,000」というのは「まだ高価」と管理人は感じます。
 デコーダー内蔵のCDプレーヤーが¥59,800くらいで発売されるとか、ブルーレイディスク付きハードディスクレコーダーに内蔵されるとか、外付けのデコ-ダーが¥19,800くらいで発売されるようになれば、身近なものになるように思うのですが.....
 ちなみに「MERIDIAN」とは「頂点」といった意味も持つ言葉のようですので、管理人にも購入できるような安価な製品は、「MERIDIAN AUDIO」からは発売されないかもしれません。

 

 さて、なぜ管理人が色々と調べているのかと云うと、耳が肥えていなくて、高性能な機器も持っておらず、加齢で高域が聴こえにくくなりつつある管理人にも「そんなにお金を掛けなくても、もっと良い音に出会えることってないの?」という期待を常に持ち続けているからです。
 高価な機器はとても購入できませんが、安価なものだと、ついつい購入してしまいますね。

 

 

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 さて、これまた「余計なこと」かもしれませんが、「1kHz矩形波」をアナログでテープに録音したら、再生波形がどんな波形になるのか試してみました。
 録音レベルが高いと、高域が下がってしまうので、ここでは-10dB (といっても、デッキのメーター表示) にして録再しています。

 

 

 これがカセットデッキ。
 上が入力波形、下が再生波形で、下の波形には「ワウ・フラッター」に拠るものと思われる、波形の水平方向の揺れが見られますが、これは初期性能が出ていないためかもしれません。

 

 

 こちらは、オープンリールデッキ「38cm /2トラ」の再生波形ですが、こちらの波形のほうが水平方向の揺れが少ないですし、「ポストエコー」も少ないように思えます。 

 

 

 「カセットデッキ」「オープンリールデッキ」いずれの再生波形にも「プリエコー」が無く、もしかしたらCDの再生波形は、「プリエコー」があるために「硬い音」と感じられている方がいらっしゃるのカモ?なんて思ったりもしますが、耳の肥えていない管理人の耳には、そういった違いは感じられません (^_^);;

 

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