マイクの高域特性

 計測用のマイクロホンで拾うと、身近なものでも20kHz以上の音は結構出ていることがわかりました。
 なのに、38cm/sのオープンリールやブルーレイディスク・オーディオには、20kHzを超える成分はあまり含まれていないように見えます。

 どういうことなのか?
 管理人はこの方面に関しては全くの素人なので、以下はあくまで推測ですが.....

 プロ用のマイクロホンでハイレゾ対応しているものというのは、2004年に発売された三研マイクロホン社の「CO-100K」が世界初で有名なようですが、オープンリールで録っていた頃は、そういった特性をもったマイクロホンは無かったのでは?と思います。
 なお、「CO-100K」は受注生産で¥280,000、これ以外にファンタム電源も必要で (ミキサーに内蔵されている場合もあります) 、一般的に使われるマイクロホンとは違います。

 またリットーミュージック発行の「Sound & Recording Magagine」や、サウンドデザイナー社発行の「SOUND DESIGNER」に掲載されているようなマイクロホンでも、周波数特性の上限は20kHzとか22kHzまでのようで、こういったマイクロホンを使うのが今でも一般的なのかもしれません。それに、「20kHz以上が収録できる」ことと、「音質が良い」「音質が好み」というのは別ですからね。

 マイクロホンで考えると想像しにくいですが、スピーカーに置き換えて考えてみると、「20kHzまでしか出ない往年の名機」よりも、「現在、販売店に並んでいる20kHz以上が再生可能なスピーカー」の方が良い音がするかといえば、そうとは限りませんよね?
 管理人も、DVDオーディオやSACDが登場した2000年頃に買った「200kHzまで再生できるスピーカー (DENON SC-777SA)」を実際に持ってはいますが、1970年代に発売された20kHzまでしか再生できないスピーカー (YAMAHA NS-1000M) の音の方が好きです。
 でもそれは、耳が肥えておらず、加齢で高域が聴こえなくなってきている管理人が感じているだけで、耳の肥えた方やお若い方は、そうは感じないかもしれません。

 スピーカーやマイクロホンのように、「電気的なエネルギー」と「音響的なエネルギー」とを変換する機器 (こういう機能を「トランスデューサー」と言います) については、他のオーディオ機器以上に「周波数帯域の広さ」だけでは比較できない要素が大きいのではと管理人は考えています。

 

 また、日本オーディオ協会に問い合わせてみましたが、2016/10/13時点で、ハイレゾロゴ申請されているマイクロホンは、まだ無いようでした。
 「プロ用のハイレゾ対応マイクロホン」はあっても、「コンシューマー用のハイレゾ対応マイクロホン」というのはまだ無いということですね。「アマチュアがハイレゾ録音することは想定されていない」のかもしれません。
 Webで「ハイレゾ、マイクロホン」で検索しても引っかからないわけです。
 SONYから発売されている192kHz/24bit録音対応のリニアPCMレコーダー「PCM-D100」の内蔵マイクでも、40kHz程度までしか伸びておらず、周波数特性に限って言えば「CO-100K」の特性には及びません。

(ちなみに、今回の測定で管理人が使用したものは100kHzまで伸びた測定用のマイクロホンですが、マッチ棒を4本束ねたくらいの大きさのもので、ライブステージに立つアーティストが握っているものや、レコーディング風景の写った写真などで見るようなものとは大きく異なるものです。)

 

 そうすると.....

 「情報量が多い」というのがハイレゾのウリですが、「20kHz以上の音は大きく減衰している」という意味では、マイクロホンで捉えた時点で既に原音からは大きく離れてしまっているのに、それを192kHz/384kHzでサンプリングしてデジタル化し、20kHz以上が再生できる装置で再生して「より原音に近い」とか、「スタジオで聴くマスタークオリティが楽しめる」とか言っていることに大きな意味があるんだろうか?

 ハイレゾのフォーマット自体が、「CDを超える器」であるのは間違いありませんが、昔のLPをブルーレイ化したようなものについては、まだそのフォーマットを活かしきれるものになっていないのでは?

というのが、管理人個人の現時点での見解です。  

 

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 「CO-100K」が登場した2004年以降に新規に録音されたものについては、「ハイレゾ・フォーマット」の持つポテンシャルを十分に活かしたコンテンツになっている「可能性」はあります。
 しかしながら、加齢で高域が聴こえにくくなってきている管理人にとっては、「20kHz以上が収録されていても、差は検知できないだろう」と思っていますし、20kHz以上がちゃんと入っているかということと、その楽曲/アーティストが好きかどうかは、全く別の話です。
 昔のモノラルで録音された名盤がブルーレイ・ディスク・オーディオでリリースされることはないでしょうけど、ハイレゾでないからといって、その価値が損なわれるものではないと管理人は思いますし、今まで関心のなかったアーティストに興味を持たせるほどの商品力を「ハイレゾ・オーディオ」には感じません。

 以前、東京にある「ハイレゾが聴けるBAR」というところに行ってみたことがありますが、演奏されている曲は、管理人にはピンと来ないような曲ばかりでしたね。
 「ここの店員さんはこういうのが好きなんだぁ.....」と思いましたが.....

 

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