まずは、手元にあるiPad (初代の「カメラ無し」を、中古で¥10,000ちょっとで買ったものです) で分光放射輝度を測定してみました。最初の測定ではiPadの明るさ設定は最大にしてあります。
これは、iPad全面に白を表示させて分光特性を測定したものです。
横軸が波長(nm)、縦軸が分光放射輝度と呼ばれるものですが、単位はW/sr/m^2/nmとなります。
見慣れない単位かと思いますが、
・「W」は、「ワット」で、パワー。
・「sr」は、平面上の角度ではなく、立体的に考えた角度の単位「ステラジアン」で、前後左右上下を含む立体的な全方向なら、4 × パイ (3.1415...)
ステラジアン になるそうです。「メガホン」や「スピーカーのコーン紙」のような形状を想像して、根元部分を中心として「どのくらい開いているか」を表すものとイメージすれば良いのかと思います。
・「m^2」は、平方メートルで、ここでは面積。
・「nm」は、「ナノメートル (10^-9 m) 」で、長さの単位ですが、ここでは光の波長のこと。
纏めて言うと、
【 被測定物の、「波長1nm毎」に、「1平方メートル」あたり、「立体角1ステラジアン」の方向に、「何ワット」放射されているのか 】
ということなんだろうと、自分では解釈しています。(素人の理解ですよ)
450nm付近にピークがありますが、特定波長でのピークが高くても、これは「nmあたり」ということであって、「赤」「緑」と比べると幅が狭いので、「青」全体としては、この状態で「赤」「緑」とのバランスは取れていて、白い画面に見えているわけです。
バックライトにはLEDを用いていると思われ、LEDをバックライトに用いている場合は、概ねこのような形になると思いますが、後述する「CCFL」や「ブラウン管」のような従来使っていた表示デバイスと比べると「青」のピークが際立っているので、「ブルーライトによる影響」が懸念されるようになったのでしょうかね?
多くの方はご存知かと思いますが、白く見えている画面でもRGBの画素から構成されています。
iPadを横にして白画面を表示させた時の状態を拡大したものが下の写真ですが、R/G/Bの3色が光って「白」に見えているわけです。
液晶パネルの奥にあるバックライトはLEDの白い光ですが、各画素ごとにフィルタを介しR/G/Bの色にして、液晶パネルでそれぞれの画素毎にどれだけ光を通過させるかを制御することで、階調のある色表現にしているわけです。
iPad全面に赤、緑、青を順に表示させて、それぞれの分光特性を示したのが下のグラフで、上のグラフと比較できるよう、縦軸のスケールは揃えてあります。
白のときはR/G/B全部が光りますから、3つを合わせた形になっています。
これが「赤」
これが「緑」
これは「青」
「緑」の光が漏れているようですが、管理人の持っているiPhone5ではこの漏れが少なくなっているようです。(フィルターの良いものが開発されたのでしょうね?)
この漏れが低減されると、「青」の色純度が上がり、R/G/Bで表現できる色域が広がることになります。
(テレビやディスプレイのカタログ等で色域を比較した図が載っている場合がありますが、図の中の三角形が青方向に広がるということです)
明るさ設定を真ん中くらいにして、白画面を表示させて再測定したのが以下です。
全体のレベルが下がりますので、縦軸のスケールを変えていますが、分光特性全体の形は、一番上のグラフの形とほとんど変わっていないことがわかります。
これは、明るさ設定を変えたときの分光放射輝度を1枚のグラフに載せたもの。
赤い線は「明るさ設定を最大」、緑の線は「明るさ設定を中間くらい」にしたものです。
「ブルーライトを減らす方法のひとつ」として、実用上問題ない範囲で「画面の明るさ設定を下げる」という方法も有効であることが判ります。
(画面の明るさを下げればブルーライトは減りますが、ディスプレイによっては「明るさを下げても、なんだか見づらい」と感じる場合もあり、それについては「見づらい画面 (1)」で説明しています。)
なお、最近のiOSでは「Night Shift」という機能があり、夜間は画面の色温度を赤っぽくする機能があるようです。この機能でも、ブルーライトを減らすことが期待できますが、管理人の持っている古いiPhoneには対応していませんでした。
お店に行ってiPhoneSEで動作を確認しましたが、バーをスライドさせることで「青っぽい白」から「赤っぽい白」まで連続的に変化させられるようで、「青」だけではなく「緑」も下げているものと思われます。
「青っぽい画面」や「赤っぽい画面」に比べると、青だけをカットした「黄色っぽい画面」というのは「くすんだ色」に見えるように個人的には感じていて、「Apple社は、ちゃんと判ってるなぁ」と思いました。
「Night Shift」に対応した機種が中古で安く手に入るようになったら、入手して測定してみたいと思っています。
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【LED電球との比較】
下に示すのが「高演色タイプ」と呼ばれるLED電球で、分光特性を測定した例です。
(「電球色」と「昼白色」があり、「昼白色」で測定しています。「電球色」については、下の特性よりも「青」が抑えられ、「赤」が持ち上げられた特性になっていると思います。)
LEDバックライトを使った表示デバイスでは、この光からフィルターを使って R/G/Bを作っているので、これと似た特性になっていると思います。