NS-1000M

 YAMAHAのスピーカー、「NS-1000M」です。

 

 1974年に発売され、1997年まで販売されていましたが、管理人は最近になって「ヤフオク」で入手しました。
 1970年代~1980年代のオーディオファンの方であれば、「見慣れたスピーカー」かと思いますが、よくよく見てみると、「全ユニットがグリルでカバーされ、サランネットが無い」というのは、ラジカセに内蔵されたスピーカーではよく見ますが、オーディオ用のスピーカーでは多くはないと思います。

 このスピーカーの音が「今でも最高!」と思っているわけではありませんが、子供の頃に憧れていた「NS-1000M」が「いつも目の前にある」と、すっかり落ち着いてしまって、最近のスピーカーに食指が伸びなくなります。
 音質については「最近の同価格帯のスピーカーの方が優れているに決まってる」と思っているんですが、管理人にとっては「音質」よりも、あの頃の「記憶」とか「思い出」のほうが重要なんです。
 子供の頃、自宅に「NS-1000M」があれば、このスピーカーへの「今の想い」は、ちょっと変わっていたかもしれませんけどね.....

 今になって気がついたのですが、「ツイーター」や「スコーカー」の「グリル内のネジ」が、等間隔に配置されていないことが判ります。
 「ツイーター」は「上下左右の4本」に更に2本、「スコーカー」は「60度毎の等間隔」に更に2本が、追加されていることが、見た目の外観に特徴を与えていたように思います。

 

 

 さて、管理人は一番上の写真に映っているスピーカーを「右ch用」のスピーカーとして使っていますが、その背面のSerial No.を見ると判るように、本来は「左ch用」として作られていたことがわかります。

 

 

 こちらが、もう片方の銘板で、こちらが「右ch用」として作られたもの。
 でもこのスピーカーでは「ツイーターが内側になるように」に配置されているのをよく見ますよね。

 

 

 スピーカーを設置するとき、「ツイーターが外側になるように置くのが一般的」かと思いますが、NS-1000Mのカタログの中で「スエーデン国営放送で、NS-1000M がモニタースピーカーとして使われている様子」を紹介する写真があり、そこでは「ツイーターが内側になる」ように設置されていて、これをきっかけにして、「ツイーターを内側に」という置き方が、「NS-1000M」の標準的な設置方法になったとか.....
 という話を聞いた事がありますが、どこで聞いたのかは覚えていません (^_^);;

 管理人が持っている「NS-1000M / 1000 のカタログ」では、1976年10月付のものには「スエーデン国営放送で使われている写真」はありませんが、1979年5月付のものには掲載されています。
 1976年10月~1979年5月の間に「スエーデン国営放送」で使われるようになったのでしょうか?

 でも「ツイーターを内側」にする置き方は、上のほうが内側に向かって狭くなっている「APOSEE」社のスピーカーみたいで、管理人は好きですね。

 

 

 

 「NS-1000M」のスピーカー端子は、ネジで締めることも出来ず、今見ると貧弱に見えますが、発売当時はこれが一般的だったと思います。
 本機種の場合は、太いスピーカーケーブルがネジ固定出来るように改造されて、高く販売されているものが、オークションなどで出品されていたり、中古オーディオ店で見かけることがあります。
 管理人が使っているスピーカーケーブルは、「Western Electric」の「14GA」というものですが、今時の高級ケーブルのように太くはないので、デフォルトの端子でも繋がります。

 

 本機が発売されていた頃は、「日本楽器製造株式会社」が社名で、「YAMAHA」は「ブランド名」でしたが、現在は「ヤマハ株式会社」が社名になっています。
 YAMAHAのWebサイトに拠れば、「YAMAHA」とは創業者の山葉寅楠氏に由来したもの。

 

 

 これがネットワーク。
 カタログに小さく載っている写真では大きさがイメージしにくいですが、結構大きいです。

 

 一緒に映っているのは、「缶ビール」と「単2の乾電池」ですが、コンデンサーは「単2の乾電池」よりも「やや太い」くらいの大きさです。
 ネットワークから各スピーカーユニットに繋がる線材や、各部品を繋ぐ線材は、そんなに太い線材ではありません。 内部のケーブルがこういったものであることを考えると、このスピーカーに使うスピーカーケーブルは、ここに映っている「14GA」くらいで十分なのかもしれません。
 内部の配線まで交換するようなマニアの方もいらっしゃるかもしれませんが、各ユニットのボイスコイルまでは変えられませんからね。

 

 

 ネットワークの重量を測ってみると、「約1.25kg」もあります。

 

 

 

 中古オーディオ店の「ハイファイ堂」さんのWebサイトで初めて知ったのですが、「ネットワークから各ユニットに繋がる線材に、年代が記載されている」という記事があり、この個体の場合「1982」という数字が見え、もしかしたらこの線材は「1982年製」なのかもしれません。
 そうすると、この「NS-1000M」は、管理人が就職する前の、最も盛んにエアチェックをしていた頃に作られたものでしょうから、管理人にとっては「最適のロット」でしょうかね?

 

 

 最近購入したテープルタップの線材にも同様の記載があり、線材には「製造年」を記載することがルールになっているのかもしれません。

 

 

 

 このスピーカーには、サランネットが付いた「NS-1000」というモデルもあり、「NS-1000M」が「黒色半艶仕上 /¥108,000 (1台) 」だったのに対し、「NS-1000」では「黒檀高級ウレタン塗装 / ¥145,000 (1台) 」となっていました。
 当初は、一般家庭用に「NS-1000」、スタジオなどの業務用途に「NS-1000M」という位置付けだったのかもしれませんが、値差が¥37,000もあり、「NS-1000M」のほうが良く売れたようで、管理人も「NS-1000」の方は実物を見たことがありません。
 オークションの出品も、大抵は「NS-1000M」で、「NS-1000」は滅多に見ないですね。

 「NS-1000M」と「NS-1000」は、単品カタログで一緒に掲載された「兄弟機種」だったのですが、「NS-xxM」と「NS-xx」が、いつも兄弟機種か?というと、そうでもなく、例えば「NS-10M」と「NS-10」は、発売時期も外観も大きく異なる、全く別の製品でした。

 「NS-1000M」の正式名称は「NS-1000 MONITOR」だったのですが、他のYAMAHA製のスピーカーで末尾に「M」の付くものは、「NS-1000M」の後に発売されたもので、「NS-1000M」に倣い黒色塗装になっていましたが、機種名の末尾に「M」の付くものが「モニターバージョン」というわけではなく、機種名で「MONITOR」とは名乗っていなかったと思います。

 

 管理人が知る限り、機種名で「M」ではなく「MONITOR」と名乗っていたものは、この機種と、1980年代中頃に発売された「NS-700X MONITOR」くらいではなかったかと思います。

 

 

 また YAMAHA からは、「NS-1000MM」という「NS-1000M」に外観が似たホームシアター用の小型スピーカーも発売されていました (2台で¥30,000) 。
 これはこれで「アリ」だとは思いますが、値段相応のものであって、「NS-1000M」の片鱗を感じさせるような音ではなかったと記憶しています。

 なお、ネットショップなどでは「NS-1000MM」が「ペアで ¥70,000 ~ ¥80,000」という価格で売りに出ていることがあります。
 それだと「NS-1000M」の中古品の相場と近いので、「NS-1000M」と勘違いして注文したりすると、現品が着いたときに、期待していたのよりもとんでもなく小さなものが届き、びっくりすることになってしまいますので、ご注意ください。
 Web上の小さな写真で見る限りは、外観もそっくりで、「レベル調整が付いているかどうか」なんて判らないですから。

 

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 さて、現在はYAMAHAから「NS-1000M」を髣髴とさせる「NS-5000」が発売されています。
 価格は2本で「¥1,500,000」ですので、管理人にはとても手が届きませんが、イベントで聴いたときには、「管理人の好きな音」という感じがしました。
 「NS-5000」もサランネットがなく、カタログでもツイーターが内側になるような置き方がされており、ちょっと「NS-1000M」っぽく、更に仕上げが「ピアノブラック」ではく「黒色半艶仕上げ」だったら、「NS-1000M?」に見えちゃいます。
 ヤマハとしては「新時代の製品」とアピールするために「NS-1000M」を髣髴とさせながらも、「新しくなった」と感じさせるような製品にしたのでしょうかね?
 ユニットは、「NS-1000M」がツイーターとスコーカーにベリリウムが使用されているのに対して、「NS-5000」では、ウーファー含め「ZYLON」という高強度繊維糸が使われているとのこと。
 クロスオーバー周波数は、「750Hz / 4.5kHz」なので、「2Wayのシステムにスーパーツイーターを足した」のではなく、可聴帯域でも「3Way」になっていて、そこは「NS-1000M」とも共通しています。(「NS-1000M」のクロスオーバー周波数は500Hz / 6kHz。)

 イベントでは、他にも多くのメーカーの製品を聴くことが出来たのですが、スピーカーで気に入ったのは「YAMAHA」と「JBL」で、昔ながらの大きな口径 (30cm) のウーファーを使ったスピーカーでしたね。
 他メーカーのスピーカーは、言葉で表現すると「整理整頓された、端正な音」。YAMAHAやJBLのスピーカーは「瑞々しい音、元気な音」と、耳の肥えていない管理人には感じられました。
 (あくまで「管理人個人の感想」ですよ。それに同じ楽曲/同じ部屋で聞き比べたわけでもありませんから、「気のせい」かもしれません。)

 

 当時YAMAHAのブースでは「NS-5000」を、Accuphaseのセパレートアンプなどで駆動していて、「NS-5000」に見合うアンプは出さないの?とYAMAHAの方に尋ねたところ、「今年、来年はムリですが、やってます」という旨の回答でした。
 現在は、コントロールアンプの「C-5000」、パワーアンプの「M-5000」、ターンテーブルの「GT-5000」が発表されていますね。(2018/09/28 プレスリリース)
 その中で、特に「GT-5000」は、かつての「GT-2000」に近い外観ですが、今回は「ベルトドライブ」で、Technicsから発売されている「SL-1200G」等とは対称的なコンセプトです。

 そういえば、最近の高級なレコードプレーヤーは、「ベルトドライブ」が多い (あるいは殆ど?) と管理人は感じています。
 そこで管理人の勝手な推測ですが、数多くの販売数が見込めない高級なレコードプレーヤーの場合、「音質を吟味した結果」だけではなく、開発コストも考慮したのでは?と、ひねくれた性格の管理人は考えています。
 というのも、小さなモーターで駆動する「ベルトドライブのプレーヤー」の方が「ダイレクトドライブのプレーヤー」よりも、モーターを構成する部品の金型代などの開発費を抑えることが出来るのではないか?と思うからです。

 一方、Technics は、世界初の「ダイレクトドライブ」によるターンテーブル「SP-10」を発売したメーカーですからこれからも一貫して「ダイレクトドライブ」かと思います。
 今になって Technics が「ベルトドライブ」を発売したら、これまでの Technics のレコードプレーヤーの歴史を自ら否定してしまうことになりますからね。

 

 いずれ「SACD/CD+USB-DAC搭載」のプレーヤ- (型番は CD-5000 でしょうか?) も発表されるのだろうと思っていましたが、先日のイベントでYAMAHAの方に訊いたところ、CDプレーヤーの5000番の開発はしていないとのことでした。
 5000番は日本だけを対象にした製品ではないそうなのですが (「日本で売っているだけでは、この値段では出せません」とのこと) 、「CD」というメディアは日本でしか売り上げの見込めないものになりつつあるのが、理由のひとつらしいです。

 「5000番シリーズ」は、じっくりと時間を掛けて開発した自信作で、頻繁にモデルチェンジすることはないかとは思われますが、管理人は手が届きそうもありません。
 ちなみに「NS-5000」には専用のスタンドが用意されており「1台で¥75,000」とのことですが、管理人がヤフオクで入手した「NS-1000M」(ペア) が、これと同じくらいの価格でした。

 

 YAMAHAにとって、これから暫くは「5000番」がフラッグシップ機種になるのでしょうかね。
 その先には「6000 / 7000 / 8000 / 9000番」とか、更には創業100周年に発売された「10000番」を超える型番を銘打った機器が発売されるのかもしれません。
 それはそれで、管理人は期待していて「是非、聴いてみたい」と思っているのですが、オーディオ市場が縮小した現在、セールス的には、1970年代~80年代頃の「1000番」(NS-1000M、CA-1000 / II / III) 「2000番」(CA-2000、GT-2000) を超えるようなものは、出てこないかもしれません。

 いずれも「管理人が購入できるような価格ではない」と思われ、英語で云うと「not affordable」ですが (笑) 。

 

 

 

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