高齢者ドライバ- (1)

 最近、高齢者ドライバーによる事故が報道されることが多いですよね。

 2017年1月17日付の茨城新聞 (前日の各局TVでも報道されていました) よれば、「2015年に75歳以上のドライバーによる死亡事故は458件で、運転免許所有者10万人当たりの発生率は9.6件となり、75歳未満の4.0件の2倍を超えていたことが16日、警視庁のまとめで分かった」とのこと。
 その事実からは「高齢者の運転は危険」ということになります。

 「免許を取って間もない若い方」と「高齢者」の事故率が他の年代に比べて高いのは判りますが、「最近、高齢者ドライバーの事故が従来より増えているように感じるのはなぜか?」というのが管理人には疑問でしたが、その理由のひとつと考えられる記事を「Wedge」の2017年2月号に見つけました。

 それによれば、
「05年に6165件あった交通の死亡事故が、15年には3585件へと減少している。これは高齢者を含む全事故の件数で、ここ10年ほどで4割以上も減っている」
「75歳以上の高齢運転者が起こした死亡事故件数のみ抽出してみると、05年は457件、15年は458件とほぼ横ばいだ」
「つまり、死亡事故全体の件数は減っているが、75歳以上の高齢運転者による事故は横ばいなので、割合が高まっている (05年 7.4% → 15年 12.8%) ということになる」

 また、自動ブレーキに関する言及もあり、
「ペダル踏み間違い事故が約7割減少,後退時の事故は約4割減少」
というデータも示されています。

(これは、管理人の個人的な見解ですが.....)
 これらの事実からは、「自動ブレーキの付いた車に買い換えるお金を工面できない」年金で暮らしている高齢者の事故が「相対的に増えた」ということなのでは?と思います。
 別の言い方をすると、自動ブレーキの効果が「新しい車に買い換えるお金を工面できない」年金で暮らしている高齢者のドライバーにまでは及んでいない、ということなのでは?と思います。

 

 自動ブレーキの付いた中古車を安価で購入できるようになるまでには、もうちょっと年月を要すると思われますが、福音として「ペダルの見張り番」がオートバックスから発売されました。
 問い合わせが多く生産が間に合わないようで、2017年1月24日現在、3月末再販予定とのこと。
 平成15年製の実家の車には対応していませんでしたが、対応する車種が更に拡大すれば.....と思っています。
 取付工賃込みで「¥39,999」と、新しい車に買い換えるよりは遥かに「ローコスト」ですので、年金頼みの高齢者の方にも、なんとか導入できる値段ではないかと思います。

 また、「オリックス自動車」からは、速度超過や急加速急ブレーキをカウントして、家族のスマホに伝える「見守りサービス」もあるようですが、2004年以降生産の車に限られるようで、実家の車ではムリみたいです。

 

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 2017/06/30に報道されたニュースでは、高齢者には「限定条件付」の免許証とする検討が行われるようです。
 「限定」の概要は、1) 自動ブレーキ等を搭載した車に限る、2) 運転できる時間帯を「昼間」に限定、3) 一般道に限定、だそうです。
 2) 3) については、許容できそうですが、1) については、「そんな車に買い換えるお金があるんだったら、もうとっくに買い換えてるよ」という気がします。
 年金で暮らしている高齢者にも導入し易いよう、
 a) 既存の車に追加できる衝突回避装置を開発するよう、自動車業界に働きかける
 b) 安価に買い換えられるような仕組み
 c) 「乗ってもあと2~3年」と考えている方に向け、「自動ブレーキ付きの車を安くリース出来るような仕組み」
も検討してもらえたら良いのに.....と思っています。
 

 公共交通機関の乏しい田舎に住んでいて、スーパーや病院に行くためだけに運転されているような方も多いかと思います。a) b) c) のようなことまで考えないと、「年金暮らしの高齢者イジメ」になってしまうのではないですかね?

 というのも、先に述べたように、「高齢者の運転が今までより危険になった」のではなく、「自動ブレーキの付いた車に買い換えるお金を工面できない」年金で暮らしている高齢者の事故が「相対的に増えた」ということなのでは?と思っているからです。
 もちろん、これひとつだけが要因と考えているのではなく、
・健康寿命が延びて、より永く運転するようになり、運転する高齢者が増えた。
・「少子高齢化」や「年金受給者を支える現役世代の減少」がいわれるように、高齢者が増え、若者が減っている
といった要因もあると思いますよ。

 

 ちなみに、2017/06/30に報道されたニュースによれば、米カリフォルニア州やニュージーランドでは「日の出~日の入り」に時間帯に限定、アイルランドでは「自宅から30キロ以内」という縛りがあるようですが、「自動ブレーキー付」といった縛りは無いようです。
 さて、日本では、新車販売を増やそうと「海外よりも更に進んだルールが出来ました」と称して、年金で暮らす高齢者に新車購入を強いるようなことにならなければ良いのですが.....
 「最新の自動ブレーキ付きが必須」が成立したら、自動車メーカーや、送迎ビジネスを行っているタクシー業者などは「ニンマリ」で、それを狙ってワイドショーなどで「ステマ特集」を作ってもらっている、なんてことはないのでしょうけど.....

 

 なお、高齢者の事故では、認知症が原因になっている場合もあります。
 免許を更新してから次に更新するまでの3年間で、認知症が大きく進む場合も考えられますので、高齢者の場合には「もっと短い期間でなんらかのチェックを行う」という考え方には賛成です。
 但し現在、高齢者が免許更新時に受けている「認知機能検査」というのも「記憶力テスト」のような気がしますし、「今の知事は誰?」と訊かれても「女子高生」だって答えられないカモです。
 「車庫入れ」や「縦列駐車」が下手でも、第三者が怪我をすることは少ないように思います。

 それよりも、高齢者ドライバーがいつも運転している車の助手席に教官が座って、「公道」を運転させてみて、信号や標識は見えているか?時々刻々と変化する状況に対応できているのか?といった実技検査を行ったほうが良いのではと思っています。
 これなら設備コストもかかりませんよね?
 管理人がアメリカ赴任中に運転免許を取得したときには、こういった形で実技試験を行っていたと記憶しています。

 当時のことですけど、一回目の実技試験では、公道を走る中で教官が「そこを右」と言っているのか、「そこを左」と言っているのかを聴き取るのに集中していて (指示は「英語」ですからね) 、「ものすごく慎重な運転」をしていたので、教官からは「Too Slow ! , Think Traffic ! 」と云われ「不合格」。
 二回目の実技試験では、「ラッキー?」だったのか、同じ教官。
 走っているうちに「前回と全く同じコース?」ということが判ってきて、余裕で「いつも通りの運転」をしたら、あっさりと「合格」。
 運転免許に関しては、公共交通期間の充実していない「車社会」のアメリカの方が、日本よりも「合理的な方法」が採られているように思います。

 「何歳になったら、一斉に免許返上」といった意見は、「とても短絡的な考え」と管理人には思えます。
  高齢者ドライバーに対して、運転できる時間帯を限定したり、 一般道に限定するだけでは「不十分」といった意見もあります。
 「高齢者ドライバーによる事故をゼロにしたい」という気持ちも判らないではないですが、そう言うのであれば「高齢者じゃないドライバーによる事故もゼロにしましょうよ」と思います。

 

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 最近は「自動運転」が話題になることも多いですね。
 現状では、事故を起こした場合にはドライバーの責任ですが、近い将来には「完全な自動運転」が実現して、乗っていた人の責任が問われないようなレベルにまで進化するのかもしれません。

 でも、そういった自動車が出来たとして、それを自動車メーカーが製造から十数年以上保証し続けるなんてしないだろう?と管理人は考えています。
 「Windows XP」みたいに「サポート期間」が設定され、「これから先は保証しません」「この車に搭載されているハードウェアは古いので、最新の自動運転ソフトウェアはインストール出来ません」となってくれば、「完全な自動運転車」が安価ものとして中古車市場に登場することはなく「高嶺の花」のままであって、年金で暮らしている高齢者の方々が手にすることはないのでは?と、ひねくれた性格の管理人は考えています。

 

 更には.....
 2019年6月1日には、新交通システムの「横浜シーサイドライン」で逆走する事故がありましたよね。
 「ケーブルの断線」が原因のようですけど、決まったルートを往復するシンプルな自動運転システムでも、「断線などによる故障」が起きれば、事故は起きるんですね。
 ましてや、周囲の歩行者や自動車の動きに時々刻々と注意を払い続けなくてはならないような、より高度な自動運転システムで、大量に動いている自動運転の車のうち1台でも故障すれば、やはり事故は発生するような気がします。
 そこで事故が起きた場合は、自動車メーカーの責任になるのでしょうかね?
 また、車の所有者が、自動運転システムが「何かおかしい?」と気がついていても、そのまま使っていて事故を起こした場合、誰の責任になるのでしょうかね?

 自動運転の実用化によって、交通事故は減ってくことが期待され、それだけでも十分に意味はありますが、交通事故が「ゼロ」「理論上起き得ない」になるのは「さらにその先」かと思います。

 

 もちろん管理人は、「完全な自動運転車」などによって、「田舎で年金で暮らしている高齢者ドライバーが、免許を返納しても困らないような社会」になってくれることを願っています。
 「完全な自動運転車」を年金頼みの高齢者が購入できるような時代は来ないかもしれませんが、現役世代が少ない町でも「完全な自動運転車」による送迎サービスを利用することで、高齢者がスーパーや病院に容易に移動できるような時代が、管理人が生きているうちに来ることを願っています。

 

 

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