SONYから発売されていたテープレコーダー「TCM-5000EV」です。
「モノラルなのに3ヘッド」というのがユニークで、それを目当てに入手したのですが、入手してみると「他にも色々とユニークな点が多い」レコーダーです。
「TCM」の「TC」は、ソニーのレコーダーに付けられていた型番ですが、「M」とは「モノラル」のことなのでしょうか?
「CASSETTE - CORDER」という名称が付けられていて、当時は「カセットデッキ」にも「ラジカセ」にも付けられていました。
これは初代「ZILBA'P」
「TCM-5000EV」の場合は「3ヘッド」と云っても、音質を極めるために「録音ヘッド」と「再生ヘッド」を別にしたのではなく、「録再ヘッド」と「モニター用ヘッド」という構成。
録音しながら「ちゃんと録れているか」「歪んでいないか」など確認できますので、インタビューや会議を録音するには、「ステレオ」であることや「高音質」であることよりも、「録音しながら、録音出来ていることを確認できる」ことの方が重要だったでしょう。
「モニタ用ヘッド」は、この穴に入ります。
「乾電池」で動き、この大きさで「SOURCE / TAPE」の切り替えがあるレコーダーは、多くはないと思いますよ。
ここにある「PEA / Pre End Ararm」インジケーターは、録音中にテープが終わり近くになると、点滅することで「お知らせ」する機能。
送り出し側のリールの回転数を検知して、「速くなったら警告」ということなのかと思われます。
これらの機能は、「 録れてなかった、どうしよう..... ○| ̄|_ 」を、極力防止しようとする意図かと思います。
音楽を録音するためのレコーダーではありませんので、メタルテープなどの高性能テープを使うための「TAPE SELECTOR」はありませんし、「DOLBY
NR」もありません。
インタビュー「する側」と「される側」の両方にマイクを用意することも想定しているようで、マイク入力は「2系統」あり、それぞれレベル調整が可能で、前面にあるのが「内蔵マイク」と「MIC 1」ジャック。
側面の「MIC2」ジャックの近くにはイヤホン端子があり、こちらが「インタビューする側」なのでしょうね。
片chへッドホンとマイクがセットになった「ヘッドセット / CBH-2」も発売されていました。
「MIC 2」は「内蔵マイク」or「MIC 1」or「LINE IN」とのミキシングも出来たようで、録音時は内側のノブが「内蔵マイク or MIC 1 or LINE IN」のレベル調整で、外側のノブが「MIC 2」のレベル調整のようです。
録音したものを記事にしたり、議事録を作るのに便利なように「-20% ~ +40%」までスピードコントロールが可能です。
一部のカセットデッキに付いている「ピッチコントロール」と称されるものは「± 3 ~ 4%」程度が可変幅で、「± 半音程度、あるいは、それ未満の可変幅」なのですが、本機は「音楽を録再するための機器」ではありませんので、大きな可変幅を持っています。
「単2の乾電池×4本」で動きます。
三脚に取り付けられそうな穴が設けられていますが.....
付けられるのは、一般的な三脚に付いている「1/4インチのネジ」ではなく、「M5のネジ」。
ということで、用途はよく判りません。キャリングケースを固定するためのネジだったのでしょうか?
誤って「EJECT」が押されたときに、テープを落とすことの無いように、「EJECT」を「LOCK」する機能があります。
但し、この個体は「LOCK機構」が壊れているようで、「LOCK」できません (笑) 。
重量は、乾電池込みで約「1.6kg弱」。
TC-D5Mと比べると「ちょっと軽い」のですが、大きさについては「横幅がちょっと大きく」「奥行きがちょっと小さい」です。
大きさや重量、「乾電池で動かせて、スピーカー内蔵」「前面右側に、丸いモノが2つある」という点で似ていますが、「想定されていた用途は、全く違うのでは?」と思われます。
この機種を、本サイトの「懐かしいオーディオ機器」のカテゴリーに入れるのか、「ちょっと前の機器」のカテゴリーに入れるのか迷ったのですが、CD登場後の1984年頃に発売されたようですので、後者に入れました。
なお、この「TCM-5000EV」は、「TCM-5000」の「マイナーチェンジモデル」と思われ、「TCM-5000」は「CD登場前」の1981年頃の発売で、「ビジネスデンスケ」という愛称が付けられていました。
「ビジネスデンスケ」という愛称には、「マスコミの取材」や「生録」に使われるだけでなく、「様々な会社で、会議を記録するのに使ってほしい」という意図があったのでしょうかね?
「TCM-5000」のカタログに拠れば、周波数特性は「20~9,000Hz」で、「CHF」カセットを使うことが推奨されています。
ラジカセでも、もっと周波数特性の伸びたものがあり、本機は「音楽を録再するための機器」ではなく、インタビューや会議を「確実に録る」ための機器と思われますので、「番外編」としてUPしています。
「TONE」コントロールも付いてはいますが、「MAX」にしても、「ZIPBA'P」の音の方が高域が伸びているような気がします。
「ラジカセにも劣る?」ように思われる周波数特性ですが、操作ボタンの配列は「TC-D5M」と同じで、「カセットデッキ」を開発する部門で企画された製品か?と思われます。
「TCM-5000EV」には、録音したインタビューを原稿にするときなどで「再生状態のままで、ちょっとだけ巻き戻しや早送り」が出来るように「CUE/REVIEW」機能があり、「TC-D5M」と全く同じメカではないようですが、類似点もありますから、機構部品のいくつかは流用されていたのかもしれません。
(「TC-D5M」の前身の「TC-D5」は1978年頃の発売、「TCM-5000EV」の前身の「TCM-5000」は1981年頃の発売のようです。)
ボタンを押下するときですが、初代ZILBA'Pの「CF-6500」と比べると随分軽いです。
「CF-6500 発売」(1977年頃) から「TCM-5000EV 発売」(1984年頃) の間に、メカも大きく進歩したのでしょうかね?
さて、「TCM-5000」が「TCM-5000EV」になって、何が変わったのか?と云うと、おそらく「VOICE・MATIC」とも云われる「VOR (Voice Operated Recording system) 」機能で、音声が聞こえると録音をスタートし、音声が途切れると録音を中断するものです。
良く似た言葉で、最近サッカーの中継などで聞く、「VAR」とは「Video Assistant Referee」のこと。
左下にある切り替えスイッチで、「録音レベルをオートにする」「VORを使う」「録音レベルをマニュアルで合わせる」を切り替え、その右側にあるノブの内側で「どのくらいの大きさの音を検出すると、録音スタートするか」という「感度」を調整できます。
「VOR」が音声を検知して録音している間は、右端の「VOR」が点灯します。
内側のノブは再生時の音量調整にもなっている一方で、操作しにくい外側のノブは、「MIC 2」を接続したときしか使いません。
「多機能であっても、慣れれば直感的に操作できる」様、熟考された末の「ユーザーインターフェース」のように思います。
なお「TCM-5000」が発売される前には、1974年頃に「TC-5000」という、インタビューなどの録音を想定したと思われるレコーダーが発売されていたようで、機種名はとても似ていますが、外観は大きく異なる機種でした。
「TCM-5000EV」や「TC-D5M」が発売されていた頃から今日まで、継続的に新機種開発を進めていれば、この大きさでも「ステレオ」で「3ヘッド / メタルテープ対応」、更には「DOLBY B・C・S HX対応」「クローズドループ・デュアルキャプスタン」といったものも「技術的には可能?」と管理人は思うのですが、「カセットテープに対する需要」がなくなってしまいました。
1990年頃、多くのカセットテープは、レンタルしたCDからダビングされるために使われていたのでは?と思うのですが、その後「MD」(ミニ・ディスク)
が登場し、デジタルでコピー出来るようになるだけでなく、CDと同様にランダムアクセスか可能になりました。
'00年代になると、PCで「数倍速」でリッピングし、Web上から「ジャケット写真」や「歌詞」を入手することが出来るようになったので、カセットテープの出番は「大きく縮小」してしまいましたね。
現在は「TCM-5000EV」とか「TC-D5M」よりも使い易いモノが、「カセットテープを使わない形」で商品化されていると思いますが、昭和生まれの管理人は「カセットテープを使う機器」が手放せないんです。