コンサイスコンポ

 Technics から「コンサイスコンポ」として発売されていた、パワーアンプ「SE-C01」、プリアンプ「SU-C01」、チューナー「ST-C01」です。
 Technics の製品では、ジャケットサイズのレコードプレーヤーであった「SL-10」と並んで、特に印象に残っている機器で、2024年4月にオークションで入手しましたが、「SL-10」は未入手です (笑) 。
 この製品が発売された頃には、管理人の家から歩いていけるような電気屋さんに置いてあって実機を見ることが出来ましたが、今はその電気屋さんも無く、このクラスの現行のオーディオ機器を見ようとすれば、最寄のJR駅裏の駐車場料金と名古屋までの往復の交通費で¥2,000程度掛かります。 

 

 機種名に含まれる「C」が、「コンサイスシリーズ」を示すのでしょうね。
 Web上の情報に拠れば、「コンサイス / concise」の本来の意味は「不必要な言葉を使わず、伝えなければならないことを簡潔かつ明確に表現する」とのこと。

 幅が297mmで、これは「A4縦」サイズであり、当時としては「随分小さくなった」と思ったものですが、今のオーディオ機器であれば、ちっとも珍しくなく、もっと小さいのだって幾らでもありますよね?

 

 奥行きも突起部を除けば、「A4横」サイズ。

 

 

 横幅が約430mmある一般的なオーディオ機器と比べると、これだけの違いがあります。

 

 

 

 

 「コンサイスコンポ」のカタログには、三省堂から発行されている「新コンサイス英和辞典」と比較した写真が載っていますが、ここでは更に一般的な辞書(B6サイズ)と、デイリーコンサイス英和辞典、カセットテープを追加しています。

 

 ここに映っている「コンサイス英和辞典」(下から2番目の本) は、「新コンサイス英和辞典」として1975年に発行され、1982年に発行された第25刷なので、おそらく「コンサイスコンポ」のカタログに載っているものと同じと思われますが、こちらは並装でカタログに載っているものは革装かと思います。
 「デイリーコンサイス英和辞典」(下から3番目の本) のほうは、第4版が1979年に発行され、これは1987年発行の第37刷で、こちらは革装。こちらも「コンサイスコンポ」が発売されていた頃のものと同じものかと思われます。

 

 「デイリーコンサイス」を見てしまうと「コンサイス」の小ささが中途半端に思え、「一般的な辞書とあんまり変わらないんぢゃない?」って思えてしまう一方で、「デイリー」だと「ポケットに入る?」くらいの大きさに感じます。
 「コンサイス英和辞典」というものは大正時代からあったようなのですが、「デイリーコンサイス英和辞典」は初版が1957年の発行のようです。
 管理人が就職して海外出張に行くときには「デイリーコンサイス」の「英和」と「和英」がひとつになった「デイリーコンサイス 英和・和英辞典」を持って行きましたが、「コンサイス」の「英和」と「和英」を持って行く気にはなれませんね。
 当時は裸眼で「デイリーコンサイス」の文字をを読むことが出来ましたが、今では+3.0程度の老眼鏡を使わないと読むことが出来ず、こんなことになるとは考えてもいませんでした。

 

 

 

 さて、本プリアンプ「SU-C01」は「MCプリ・プリアンプ」を内蔵し、MCカートリッジにも対応しています。
 多くのメーカーでは「MCヘッドアンプ」と称していましたが、これは「MCプリ・プリアンプ」と呼んでいます。

 

 

 インシュレーター部分を除いた厚みは「1.69 inch」で、これはEIA (Electronic Industries Alliance / 電子工業会) で云う、ラックにマウントする機器の高さを表す単位「1U = 1.75 inch」に近い高さで、1980年1月に発行されたカタログにも「パネル高さ1U (43.6mm) を実現」と記載されています。

 

 

 

 ちょっと面白いのが「電源コード」で、プリアンプの「SU-C01」のコードは十分な長さがあるのですが、パワーアンプ「SE-C01」とチューナー「ST-C01」の電源コードは極端に短く (60cm弱) 、これは「プリアンプの SU-C01 から取ってくれ」ということなのでしょうね。

 

 また、パワーアンプ「SE-C01」には「POWER」スイッチすら無く、プリの「SWITCHED」から取ってくれということのようですが、「パワーアンプ」は「プリアンプ」無しでは使えませんし、Phono入力時にはチューナーは使いませんので、「プリアンプ」と「チューナー」に電源スイッチがあって、「パワーアンプ」に電源スイッチが無いのは「合理的な原価低減」とも言えますけどね.....

 

 他のコンポーネントと組み合わせるのではなく、「この3台を同時購入して使ってください」という意図なのでしょうかね。
 ま、このコンサイスポンポの1台だけを購入して、他はフルサイズのコンポーネントと並べても違和感がありますけどね.....

 

 

 1978年8月に発行されたカタログに拠れば、プリアンプ「SU-C01」に、こういったケーブルが同梱されていたようです。

 

 

 

 

 

 中段にプリアンプを置いて、下段にチューナーを、上段にパワーアンプを置くことを想定しているようです。

 

 

 

 元箱も付いていました。

 

 

 箱に印刷された機器の写真は「実寸 / Actual Size 」で、箱に入った状態でも「ほら、こんなに小さいんですよ」とアピール。

 

 箱には日本語表記が無いので、輸出向けと共通だったのかしらん?

 

 クッションも残っています。

 

 

 

 取説も付いていれば「完璧」だったのですが、残念ながら付いていませんでした。

 

 

 元箱には「さげ手」を設けることが出来ました。

 

 

 こんな感じで持つことが出来ましたので、電気屋さんで買って家まで持って来れなくもなく、1台だけなら持って来れますが、3台だとムリですよね?

 

 

 また、この箱は「レコードバック」としても使えたようです。

 

 

 LPレコードのジャケットよりもやや大きいサイズでした。

 

 「コンサイスコンポ」を購入後にこの箱にレコードを入れて、お外に持ち出してくれれば、「ほら、こんなに小さいんですよ」と宣伝にもなったんでしょうかね。

 

 

 

 

 この頃の社名は、「Panasonic」ではなく、「松下電器産業株式会社」

 

 

 本機の場合、プリアンプが「¥50,000」、パワーアンプが「¥65,000」で、合わせて「¥115,000」。
 これだけ出せば、例えばYAMAHAであれば本機の1年くらい前に発売された「A-1」を買うことが出来ましたので、本機は「小さな高級機」という位置付けだったかと思われますが、音質については耳の肥えていない管理人には訊かないでください (笑) 。

 

 

 脚については、前だけ大きなものが使われていて「なんちゃって~~」的ではありますが、前の脚は「A-1」のものよりも大きく、やはり「高級機っぽい」です。

 

 

 これより2~3年後に発売になった、SONYのCDプレーヤー「CDP-101」にも、こんな立派な脚は付いていませんでした。

 

 

 前についている脚ですが.....

 

 

 脚の内部を、このように起こすことが出来、

 

 

 フロント部をやや持ち上げた、こういった配置も可能ですが、樹脂製の脚ですので、この上にあと2台載せる気にはなりません。
 重ねるのではなく、並べて配置する用ですかね?

 

 

 Technics の製品らしく、天板の右手前には特性を示すグラフが.....

 

 でも、例えば10Wと100Wの間の数字は「2」「3」「5」「7」ではなく、「20」「30」「50」「70」の方が判り易かったような.....
 ちなみに、このパワーアンプですが、STEREO駆動だと42W+42W、MONO駆動だと80W出るようですが、いつもご近所に迷惑を掛けないような音量で聴いている管理人は、meter range を 「× 0.1」 にして聴いています。

 

 本機が発売されていた頃の Technics の「プリメインアンプ」や「カセットデッキ」のメーターの多くは「FL (蛍光管) ディスプレイ」が採用されていて、LEDによる表示は一部の機種に限られていたような気がしていて、管理人にとっては「特別感」があります。
 カタログに拠れば「2ポイント表示」とのことですが、残光なんでしょうかね? 3ポイント光っているように見える瞬間もあります。

 今なら「D級アンプ / デジタルアンプ」という技術があって、もっと小さいアンプでも42W+42W出すことは可能でしょうけど、当時としては画期的で、パルス電源による「電源トランスの小型化」が図られていました。

 

 

 「STEREO」と「MONO」の切り替えSWは、底面にあります。

 

 

「MONO」にすると、「mono」のインジケーターが点灯し、「right」chのメーターのみが動作します。

 

 

 但し、MONO時の入力は「Lch」です。

 

 

 セパレートアンプなら、スピーカーを接続する端子は「ネジ止め」にして欲しかったなぁ~~
 「STEREO」と「MONO」の切り替えなんて無くてよかったのに.....

 

 

 だからと言って、「ネジ止め出来る製品」の方が、「ネジ止め出来ない製品」よりも優れているなんて言うつもりは全くなくて、例えば「NS-1000M」のスピーカー端子は「ネジ止め」出来ませんが.....

 

 

 「ネジ止め出来る NS-1000MM の方が、音質が良い」なんて全く思っていません。

 

 

 チューナー「ST-C01」に「信号強度を示すメーター」や「TUNINGメーター」はありませんが、その代わりに「アクティブセンサ」という機能が盛り込まれ.....
 信号が無いときは両方の矢印が点灯。

 

 

 これは、「もちょっと右 (高いほう) 」

 

 

 これは、「もちょっと左 (低いほう) 」

 

 

 「active servo lock」を「on」にしていれば「lock」され、矢印が消灯する仕組みです。

 

 

 管理人が知る限り「最初のコンサイスコンポ」と思われる1978年8月に発行されたカタログには、まだリニアトラッキングの「SL-P10」は登場しておらず、「SL-1301」という一般的なプレーヤーとの組み合わせが紹介されており、組み合わせるスピーカーの一例として「SB-E100」というフロア型で30cmウーファーを含む3ウェイで¥80,000/1本のものが紹介されており、カセットデッキの紹介はありませんでした。

 1980年1月に発行されたカタログでは、レコードプレーヤーとして「SL-10」が登場、チューナーについては、クオーツシンセサイザデジタルチューナー「ST-C03」といった上位機種が発売されましたが、アンプについては「SU-C01」「SE-C01」の後継あるいは上位と思われる機種は、管理人が知る限り無かったようです。

 またカセットデッキについては、横幅が297mmであっても、「SU-C01」などより高さが約2倍あるカセットデッキ「RS-M02」や、高さが約3倍あるカセットデッキ「RS-M03」が登場しましたが、これは「オトナが使う小さな高級機」ではなく、後に登場する「若者が使うミニコンポ」を見ているように、管理人は感じます。
 更に、1984年5月に発行されたカタログに掲載されている「コンサイスW」に至っては、アンプ / チューナー / ダブルカセットが一体化され (かつては「コンサイスコンポ」でしたが、この頃には既に「コンポ」という言葉は消え、「コンサイスシリ-ズ」と称されています) 、「おにゃのこ」向け?と思われる「ピンク」のカラーバリエーションもありました。

 

 コンサイスコンポのカタログには「音のエスプリ、凝縮コンポーネント」とアピールされていますが、管理人にとっては、「横幅297mm、高さ47mm、奥行き210mm (突起部続く) 」の筐体の中に凝縮された機器だけがコンサイスコンポであって、たとえ横幅が297mmでも、高さが2Uもあるような製品は「ミニコンポの先駆けであって、コンサイスコンポではなぁ~~い!!」と思っています (笑) 。
 「コンサイス」と名乗るのであれば、高さは「鞄に入れて持ち歩ける辞書の厚み」くらいじゃないとね..... 

 

 

 

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