TC-3250SD

 SONYの上面操作型のカセットデッキ、TC-3250SDです。

 

 SONYの上面操作型カセットデッキの中では中級クラスにあたるもので、管理人が中学生の頃に、実家で使っていましたが、管理人が就職し実家を離れてから故障したようで、父親が手放したようです。
 最近ヤフオクで見つけて落としました。管理人にとっては、昔使っていた懐かしいカセットデッキです。

 前面操作型のデッキだと、アンプやチューナーと揃えるため、横幅が「430 ~ 440mm 前後」のものが多いですが、本機の横幅は「385mm」とやや小さめです。
 でも、「上面操作型」が、どれもこのくらいの横幅かと云うとそうではなく、価格が上がるにつれ、ちょっとづつ大きくなっていったようで、本機種より下位機種の「TC-2030」の横幅は346mm、上位機種の「TC-4260SD」の横幅は411mm、「TC-6150SD」の横幅は「435mm」ありました。

 

 上面操作型だと操作面が広く確保できるので、録音レベル調整は、ロータリー式ではなく、スライド式になっているものが多く、この機種では「LINE」と「MIC」のミキシングが出来、レコーディングスタジオのミキシングコンソールを連想させますね。

 

 

 こんな感じでしょうか?

 

 

 この頃は、SLの音や野鳥の鳴き声などを「生録」することも盛んに行われていたようで、カセットデッキには、前面にマイク入力があるのが一般的で、ローコスト機はLINE/MIC切替で対応、高級機はミキシング可能なものが多く、この製品が記載されたSONYのカタログにも、数多くのマイクやミキサーが掲載されていました。

 しかしながら、例えばSONYの場合、「TC-K777」でマイク入力を無くし、マイク録音する際には「マイクロホンアンプ MX-1000」を併用するような商品展開を行いました。実家にある「TC-K555」にもマイク入力はありません。
 以後カセットデッキには、マイク入力がなくなっていきましたが、多くの方は困らなかった (=マイクは使っていなかった) ということなんでしょうね。
 管理人の場合、高校の文化祭のときに、この「TC-3250SD」を持ち込んでマイク録音した記憶がありますが、それ以外にマイク録音したことはありませんでした。

 

 

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 さて、いくつもの機器を持っている方々からは、ラックに機器を重ねて配置できる「前面操作型」が重宝されたようで、どのメーカーも「上面操作型」から「前面操作型」に移行していきましたね。
 本サイトでも「前面操作型」の SONY の「TC-K8B」を載せていますが、一気にこの形に進んだのではなく、「前面操作型」であっても、
  ・蓋を手前上方に開け、奥の空間に手を入れ、
   その中にカセットテープを「水平」或いは「斜め」にセットするもの
  ・カーステレオのように、スロット内にカセットテープを挿入するもの
  ・上面操作型だったカセットデッキを、そのまま手前に90度起こしたようなもの
などありました。
 管理人がオーディオ機器に興味を持った頃は、これらと「正立透視できる前面操作型」が共存していたので、当時は「なんでこんなことを?」と思ったのですが、「正立透視できる前面操作型」が出来るまでの過渡期の製品が残っていたのですね。

 

 でも、性能を出しやすいのは、「上面操作型」のようです。
 フライホイールに直径の大きなものが使えますし、レコードプレーヤーのように「回転するもの」は、水平に回転させたほうが、性能は出しやすいのかと思います。

 SONYの場合、1974年11月付のカセットデッキのカタログには、「TC-6150SD」という「上面操作型」の「3ヘッド、クローズドループ・デュアルキャプスタン」のデッキが掲載されています。
 「TC-6150SD」よりもちょっと後の、管理人が持っている「正立透視できる前面操作型」の当時の最上位機種「TC-K8B」は、「3ヘッド」でも、「クローズドループ・デュアルキャプスタン」でもありませんが、その頃発売されていた「エルカセットデッキ」の最上位機種では「正立透視できる前面操作型」かつ「3ヘッド、クローズドループ・デュアルキャプスタン」を実現していました。

 SONYとしては「正立透視できる前面操作型」のカセットデッキにも「3ヘッド、クローズドループ・デュアルキャプスタン」を採用したものを出したかったのでしょうけど、スペース上の制約から実現できなかったものと推測します。
 管理人の記憶では、SONYから「正立透視できる前面操作型」かつ「3ヘッド、クローズドループ・デュアルキャプスタン」のカセットデッキが発売されるのには、1980年代になってからの「TC-K71」「TC-K75」「TC-K777」まで待つことになったと思います。

 そう考えると、メタルテープの登場前から、あの筐体で「3ヘッド、クローズドループ・デュアルキャプスタン」を実現した、TEACの「C-1」って、「すげぇ~~」って思いますね。
 今もヤフオクで高値で取引されるのも判りますが、管理人には、とても手が出ませんので、ここではその代わりに、外観がよく似ている「C-3」の写真を載せます (笑)

 

 

 さて、カセットデッキでは、「前面操作型」が主流になっていったのですが、その後に登場したCDプレーヤーでも、「カセットデッキのような操作性が受け入れられる」と考えたのか、各社の第1号機は「前面操作型」で、カセットデッキの様に、手前斜め下方に扉が開いて、上部からディスクを立てて挿入するものが多かったのです。
 その第1号機の中でSONYの「CDP-101」が、薄型筐体で手前にトレーが出てきて、トレーの上にディスクを置く型になっていて、その後は他社もこの型になってきました。
 「さすがは、SONY」ということですが、カセットデッキとCDプレーヤーとでは、受け入れられる形は異なったのですね。

 あと、お若い方はご存じないかもしれませんが、「レーザーディスク・プレーヤー」というものがあり、登場時の「LD-1000」は、レコードプレーヤーのように蓋を上方向に上げて、中にディスクを置く様なスタイルでした。
 「CDP-101」の影響を受けたかどうかは判りませんが、後の「LD-7000」では、前面操作型になり、大きなトレーが手前に出てくるようになりました。
 どうやら、ディスクを非接触で読み取るプレーヤーでは「トレー型」が広く浸透したようです。

 これに倣ったのか、カセットデッキやレコードプレーヤーにおいても、トレーが手前に出てくるような機種もありましたが、これは少数に留まったように記憶しています。

 一方で、ビデオデッキの場合、広く普及したのは、「カセットデッキ」や「CDプレーヤー」で一般的だったものとは異なり、前面に設けられたスロット内にビデオカセットを挿入する形でしたね。
 これは「カーステレオ」にも似たローディグ方法だったように思います。 

 

 

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 このデッキには上面操作部に「AUTO SHUT OFF」と表示されています。

 

 「AUTO SHUT OFF」とは、録再や早送り/巻戻しでテープ端に達したときに、リールが止まったことを検出して、「STOP」状態にする機能です。
 「あって、当たり前」の機能のようにも思えますが、「AUTO SHUT OFF」と「わざわざ」表示するということは、「そうでないもの」もあった訳です。
 SONYの場合、テープ側に「AUTO SENSOR」という機能を持たせたものがありました。

 

 

 

 

 この写真は、右側のリールにテープが全部巻き取られた状態です。
「AUTO SENSOR」が動作した状態を管理人は見たことがありませんが、録音時に銀色の部分を検出することで、「ピー」と音が鳴って、「テープが終了した」ことを知らせる機能だったようです。 

 

 後には、リールの回転が止まったことを検出して「STOP」させるようになったので、「AUTO SENSOR」の付いたカセットテープはなくなったようです。

 

 

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 本機でも「 F & F 」(フェライト アンド フェライト) ヘッドが使われており、使用時間は判りませんけど、殆ど磨耗していないように見えます。

 

 

 一方これは、ほぼ同じ時期 (1970年代) に発売された「SONY製ラジカセ」に搭載されていたヘッド。
 おそらく「パーマロイ」と思われますが、管理人が長く使い込んだもので、ヘッドが磨耗しているのが判ります。

 

 

 

 

 「TC-3250SD」は、古い製品ですので背面には「DIN端子」も付いています。
 「DIN端子」については、「JR-X6」のページで説明しています。

 

 この頃はまだ、「右chは赤、左chは白」というのは、定着していなかったようですね。

 

 

 

 側面は、木目の塩ビシートが張られたもののようですが、近付いて見ない限りは、「天然木突板仕上げ」のようにも見えます。

 

 

 

 40年以上前のものですので、再生動作はしますが、ベルトが弛んでいるのか、ワウ・フラッターが気になりますし、再生スピードがやや速くなってしまっているようです。
 ベルト類を交換して再調整できないか、いずれ業者さんに相談してみようと思っています。
 (管理人には、そういったスキルが無いのです..... )
 昔、管理人が実際に使っていた機種なので、少々お金をかけても「良い状態にしたい」と考えるわけですが、当時を知らない若い方から見れば、「直してでも使いたい」ような名機ではありませんけどね。

 

 そんな中、ある時「PAUSE」ボタンが戻らない状態に.....

 

 これでは、録音はもちろん、再生も出来ませんから、「ピッチ」や「回転ムラ」と合わせ、業者さんに修理を依頼しました。
 現在、修理から帰ってきた「TC-3250SD」を使っていますが、「ピッチ」や「回転ムラ」については、やや良くなった気はしますが、元々の「ワウ・フラッター」の仕様が「0.1%」ですから、後の製品には敵いませんね。
 そもそも40年以上前に発売された製品ですから.....
 CD登場以降は「ワウ・フラッター」の全く無い音に慣れてしまっているので、今「TC-3250SD」の音を聴くと「おやっ?」と思う点もありますが、当時はこういった音が「聴き慣れていた音」だったのかもしれません。

 

 過去にいくつもあった「上面操作型」カセットデッキの中でも、この製品は「かなり昔の、古~いもの」と感じさせないような「優れた意匠」を持つ製品のひとつかと、管理人は感じています。
 そこから40年以上経てば、製品企画をされる方もデザイナーも設計者も入れ替わるわけで、管理人の目には、最近のSONY製品は当時のものとは大きく変わっているような気がします。
 今の若い方から見れば、今の製品のほうが魅力的に感じているのかもしれませんけどね.....

 

 SONYの場合、「TC-3250SD」が発売されていた頃は、オープンリールデッキも、カセットデッキ (可搬型の「デンスケ」タイプも含め) も、「TC-xxxx」という型番で、末尾の「SD」は「DOLBY搭載」を意味していましたが、後にはオープンリールは「TC-Rxxx」、カセットデッキは「TC-Kxxx」、可搬型は「TC-Dxxx」という型番に変わりました。

 

 

 

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