NS-10M

 YAMAHAのスピーカー、「NS-10M」です。
 管理人が就職するまで実家でずっと聴いていたもので、1978年春頃に購入したもの。

 

 後には「NS-10M Studio」などのモデル展開もあって、レコーディングスタジオが映った写真でもよく見ることがあったスピーカーです。
 サランネットを外すと現れる「白いコーン」が印象的で、ヘッドホンの「HD-414」と同様に、写真に小さく写っているだけでも「あぁ、あれが置いてある」ということがすぐに判る外観でした。
 購入から40年近く経過しているので、「白いコーン」が黄色くなってきました。普段はサランネットを付けていて、誰もタバコは吸わなかったのですがね。

 

 

 諸事情で、正面の「YAMAHA MODEL NS-10M」という機種名の部分が隠されていたり、フォーカスがボカされている場合もありますが、それでも直ぐに判っちゃいますよね。

 

 

 かなり売れたと思われるスピーカーで注目された為でしょうけど、このスピーカーに対する評価は分かれているようで、「良い」と思っている方もいれば、「そうでもない」と思っている方もいらっしゃるようです。
 管理人は「1977年の発売当時、ペアで¥50,000のスピーカーとしては、良かった」と思っていて、「そうでもない」と思われている方というのは、外観が「NS-1000M」に似ているために、その片鱗を期待していらっしゃるか、あるいは「NS-10M」に影響を受けた後発のスピーカーや、「Sonus faber」「Kiso Acoustic」などの「NS-10M」とは比べ物にならない高価格な小型スピーカーと比べていらっしゃるのでは?と思っています。

 管理人の場合、それまではVictorのモジュラーステレオ「SSL-Z3」があり、それが「NS-10M」(+プリメインアンプの「A-1」) に変わったときには、劇的な変化を感じましたね。
 それまで使っていた「SSL-Z3」のスピーカーは「NS-1000M」よりも大きなものでしたが、小さな「NS-10M」から出てくるクリアな音にはびっくりしたものです。
 その後、他社からも小型で性能の良いスピーカーが登場しましたが、まだ「BOSE」の「101MM」や「501X」とかが登場する前でしたから、発売当時このスピーカーは画期的だったのでは?と思います。

 

 「NS-10M」単品のカタログ (1977年9月発行) を見ると「このサイズで左右対称設計」と記載されています。
 この頃、スピーカのユニットが左右で対称に取り付けられていることは「当たり前のこと」ではなかったのですが、サランネットを付けて聴く限り、外観上の問題はありませんでした。

 サランネットをつけている「NS-10M」の写真も載せますが、「サランネットなし」で見ることが多いですよね。メーカーの「NS-10M」単品のカタログでも、サランネットを外して設置した写真のほうが多いです。

 

 このスピーカーの場合は、サランネットを外したときに「NS-1000M風に見せよう」という狙いがあって、左右対称にしたのだと思われますが、その後は他社のスピーカーでも「左右対称が一般的」になり、サランネットを外した状態についても、見栄えが良くなっていきました。

 

 今では「白いコーン」と聞くと、「NS-10M」を思い出す方も多いかもしれませんが、「NS-10M」のご先祖様と思われるスピーカーのひとつが「NS-451」。
 「NS-10M」が18cmウーファの密閉型だったのに対して、「NS-451」は20cmウーファのバスレフ型。
 「NS-451」の方が低音がよく出ていたような気もしますが、管理人は密閉型の方が好みです。(位相の違う低音は好きではないのです)
 他にも、「V1 LINE」として発売された「システムコンポーネント」のひとつであった「NS-351」(1976年頃発売) は、「20cmウーファ」と、ウーファと同じ口径と思われる「パッシブラジエーター」で構成されていて、当時は各ユニットの型番も明記されていました。
 (ウーファ:JA-2059、ツイーター:JA-0555、パッシブラジエーター:JA-2060)

 管理人の場合、「白いコーン」と聞くと、まずは「V1 LINE」のスピーカー「NS-351」 を思い出します。
 カタログを見る限り、「NS-351」「NS-451」とも、「左右対称」ではなかったようですが、「NS-10M」が左右対称で、サランネットを外した状態が「NS-1000M」に似ていて、「NS-351」比で小型化され設置し易くなり、値段も下がってきた (NS-351が¥32,500、NS-451が¥26,500、NS-10Mが¥25,000 / 1本) ので大ヒットし、後継機種を含めると2000年頃まで販売されていたようです。

 

 「NS-10M」の裏面の定格銘板には「Lch用」「Rch用」で、それぞれ 「SER.NO.」欄の末尾部に「L」「R」が印刷されています。
 生産工程の最後で、2台に同じ「SER. NO.」 を押印して、ひとつの梱包箱に入れて出荷したのでしょうかね。
 今時のスピーカーだと、「金メッキ端子」で「ネジ止め」出来るものが多く、更には「バイワイヤリング」できるものもありますが、当時は下の写真のようなスピ-カー端子が一般的で、「NS-1000M」でも同様です。

 

 

 

 ところで、最近のスピーカーでは、各ユニットをボックスの中央に縦に配置したものが多いような気がします。

 

 この方が音質的に有利な点もあるのかもしれませんが、ホントのところは「音質を突き詰めた結果」ではなくて、「左右で別々に作る必要が無いので、コストが抑えられる」という意図ではないか?と管理人は考えています。

 また、トールボーイ型のスピーカーが昔よりもかなり増えたように感じていますが、これらは「オーディオ市場が小さくなり、大量に売れなくなった」ことと、「大画面テレビの両側に、場所を取らずに置けるようなスピーカーの需要の方が多い」とメーカーが考えた結果では?と管理人は考えています。
 その結果なのか、30cm/38cmウーファー搭載のスピーカーが少なくなってしまっている現状については、ちょっと寂しく感じます。

 なお、会社が用意した6畳1間の部屋に長く住んでいた管理人としては、「NS-10M」くらいの大きさで高性能なスピーカーというのは、とてもありがたい存在で、「NS-10M」と同じくらいのサイズの「セレッション」製の「SL6-Si」を長い間使っていました。

 

 今の製品で「ペアで¥50,000」という予算であれば、「NS-10M」より優れたものは数多くあるとは思いますが、今「NS-10M」を聴いても、愉しい音だと思います。
 でも外観や型番が「NS-1000M」に似ているからといって、「小型だから低音は敵わないとしても、中高音はNS-1000Mに迫るものがあるのでは?」という期待はしないでくださいね。
 ベリリウム振動版を使った「ツイーター」と「スコーカー」から出てくる「NS-1000M」の音は「NS-10M」とは全く別の音であって、でも価格帯も大きさも全然違いますので、「どちらが優れている」という話では無く、「どちらもアリ」だと管理人は思っています。
 両方とも「Natural Sound」を表す「NS-xx」ですが、4倍も値段が違えば、そりゃだいぶ違いますよ。
(「NS-1000Mに似ている」という理由で「NS-10M」を購入された方も少なくないと思いますけどね。)

 

 

 ところで「NS-1000M」の場合、前面には「NS-1000 MONITOR」と表示されていますが、「テンモニ」とも呼ばれる「NS-10M」の場合、「MONITOR」という言葉は、本体前面にも取説 (本体背面) にもカタログにも出てきませんね。

 

 

 

 

 「NS-1000M」に倣って「NS-10M」と付けたものの、発売当初はレコーディングスタジオなどで「モニタースピーカー」として使われるとまでは考えていなかったのかもしれません。(管理人の勝手な想像ですけど.... )

 ちなみに管理人が持っている1977年9月の「NS-10M」のカタログでは、一般家庭内でのセッティングが紹介されていますが、スタジオで使われていることを想定しているような写真や記述は載っていません。

 

 だからといって「スタジオでモニタースピーカーとして使われている = 高性能」というかと云うと、そうとも限らなくて、「その曲を聴く年齢層の方々が使っているような装置で、どう聴こえるのか」を確認する目的で、J-POPのアルバムを仕上げる時などでは「NS-10M」のようなスピーカーも使われていたのでは?と思います。

 一方、クラシックの作品を仕上げる時には、ご年配の方が多く聴かれることを考慮し、ご年配の方が所有しているようなスピーカーが使われていたのでは?と思っていて、「NS-10M」が使われることは無かったのでは?と思います。

 

 

 

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