これは、松下電器から Technics ブランドで発売されたレコードプレーヤー「SL-10」です。
ホントにレコードジャケットサイズで、この中にLPレコードが収まっちゃうんです。
但し、これは上のジャケットとは別のレコード盤で、円盤の大きさが判るように白いレコード盤を使っています。
リニアトラッキング方式を採用しトーンアームを蓋側に取り付けることで、このサイズを実現していました。
でも、それだけではなく「MCカートリッジ標準装備」「MCプリ・プリアンプ内蔵」、更にはダイナミックバランス方式を採用することで、プレーヤーを「縦・横・斜め」どのような向きに置いても演奏可能でしたから、発売された当時、管理人はとても驚いたもので、1980年のグッドデザイン賞のひとつにも選ばれました。
極端な話「上下逆さま」でも演奏可能ですから、上蓋は左右側面にあるボタンを押さないと開きません。
手前左にある「電源スイッチ」をオンすると、アームの奥に赤い光が点灯し、更に盤面が照らされるのでトラックが見えやすくなります。
手前右に並んだボタンですが、「start」を「ちょん押し」するとターンテーブルが回りだし、針が降り演奏を開始します。
演奏中に「start」を「ちょん押し」すると、針が上がり、アームが外周側に移動した後、針が降り、再び演奏が始まります。
また演奏中に「start」を「長押し」すると、「<」が点灯し、アームが上がり内周方向に動きます。
「start」ボタンから指を離すとアームが止まり、「cueing」ボタンを押すと、アームが降下し演奏が始まります。
また「start」ボタンをやや強めに押さえると「<」が2つ点灯し、アームの移動速度が早くなります。
「stop」側も逆向きで類似の動きをしますが、「ちょん押し」の場合は、アームが最外周に移動したのち、ターンテーブルが止まります。
CDプレーヤーしか扱ったことのない方にとっては、一般的なレコードプレーヤーのトーンアームの上げ下げは、かなりデリケートなものに感じられるでしょうけど、蓋を開け盤をセットしたら、蓋を閉めて「start」を押すだけですからCDプレーヤー並みの「イージーオペレーション」と管理人は感じます。
でも本機は、CD登場 (1982年10月) 以前に発売されていたもので、CDプレーヤーの操作性を模したものではなかったんです。
「start」ボタンと「stop」ボタンそれぞれに、「ちょん押し」「押下」「長押し」で、3つの役割を持たせることによって、シンプルな外観ながら多機能になっているんです。
1970年代の中頃、管理人が最初に触れた Victor のセパレートステレオ「SSL-Z3」のレコードプレーヤーには、アームリフターすらなく、音量を下げてヘッドシェルの指かけ部分を右手の人指し指で持ち上げて、慎重に上げ下げしていましたからね。
更に、SL-10が発売された後に発売された上位機種「SL-15」には、10曲までのプログラム機能があり、ここまで来ると、CDプレーヤーの操作性と比べても全く遜色なく、とても先進的だったかと思います。
底面奥にあるこのネジ穴ですが、管理人には用途が判りません。取説があれば判るかもしれませんが.....
背面に「MM / MC」切替スイッチがあります。
これがカートリッジで、ネジ止めするようです。
「T4P規格準拠」のカートリッジしか使えず (「T4P」というのは、このプレーヤーをきっかけに Technics が提唱した規格だったように記憶しています)
、1989年7月に発行されたオーディオテクニカのカタログには5機種も掲載されていましたが、現在は発売されていないようで、オークションとかで動作品を探すしかないと思われますが、針が摩耗したときに交換針って手に入るのかなぁ?
「T4P規格準拠」のカートリッジって、Technics や オーディオテクニカ 以外にも、SHURE や、後述する Pioneer からも発売されていたようです。
ネジを緩めればカートリッジを外せますが、このネジってホントに必要だったのかなぁ。
取説もなく、他に「T4P」のカートリッジを持っていませんので判りませんけど.....
これが外したカートリッジですが、一般的なレコードプレーヤーと違って「ヘッドシェル」とか「シェルリード」が無くなります。
そのため「トーンアーム」と「ヘッドシェル」の接触部、「ヘッドシェル」と「カートリッジ」を繋ぐシェルリードが無くなり、「トーンアーム」と「カートリッジ」が直接接続されますので、接点が
4 × 2 = 8 箇所減りますし、誤接続する可能性が無くなります。
取り付けがシンプルな点が、「T4P」の売りだったように記憶していて、ネジ締めしなくても問題なく使えそうな気がしますが.....
新品購入であれば、Technics の「310MC」が付くところ、入手した「SL-10」には Pioneer 製のカートリッジが付いていましたが、付いているだけでも「ありがてぇ〜〜」です。

カートリッジに機種名の記載はありませんが、出品者さんの情報に拠れば、「PXV-961」というモノのようです。
管理人が知る限り「T4P」対応カートリッジは重量が6gに統一されており、トーンアームの先端からの針先の位置も決まっていたでしょうから、針圧とかオーバーハングを気にしなくてよく、本プレーヤーでは1.0gから1.5gまでの針圧調整が出来たようです。
本体部分と上蓋を繋ぐヒンジ部の近くに、針圧の調整があります。
円盤の大きさを検知することで「33 1/3回転」と「45回転」を自動切り替え。
別売りのカーアダプター「RP-957」を使用することで、アウトドアでの使用も可能でしたが、音を聴くためにはスピーカー以外にも、屋外で使えるフォノイコライザやアンプを用意する必要があります。
でもCDが登場する前でしたから、「カセットテープの音」に満足していない方にはセールスポイントになったのでしょうかね。
このレコードプレーヤーなら、初代の「コンサイスコンポ」と並べても「オトナが使う小さな高級機」といったイメージを損なわないかと思いますが、あくまで管理人個人の感想です (笑) 。
なお1980年2月に発行された「SL-10」の単品カタログで紹介されている「組み合わせ例」では、チューナーは上の写真にある「ST-C01」でしたが、アンプは高さが「2U
/ 98mm」ある、インテグレーテッドDCアンプ「SU-C03」が紹介されていました。
リニアトラッキングのレコードプレーヤーって、他社では「ハイエンド、高級品」という位置付けのものもあったかと記憶していますが、Technics
の場合は「操作が簡単で誰にも使いこなせて、でも高性能」といったコンセプトだったように思います。
このようなスタンド (型番:SH-B10) も入手しました。
スタンドの突起が、プレーヤーの4隅にあるインシュレーターの中央部に設けられた穴に収まるようにセッティングするんです。
コンサイスコンポと並べると、こんな感じになります。
「水平に置かなくちゃいけない」という、これまでのレコードプレーヤーの常識を覆したプレーヤーですから、こういった愉しみ方も出来るんです。