これは、かなり昔の真空管ラジオ「UM-680」ですが、最近オークションで入手したもの。
電源を「オン」するとダイヤルライトが点灯し、外観に「温かみ」が出てきて、右上にある「マジックアイ」が光ります。
ラジオの背後にあるカーテンの一部が、裏蓋の開口部から漏れている光で照らされています。
これが背面。
本体前面に機種名は見当たりませんが、裏蓋の右下に見つかります。
「最高の品質 / 真空管はナショナル?」と読めるようなシールが貼られており.....
「ブラウン管」を含めて考えれば、この頃から「TVがプラズマ/液晶方式に入れ替わる」'00年代までの間、真空管は「経営の柱のひとつ」だったかと思われます。
内部には「ナショナル」のロゴの付いた真空管が並びますが、「最高の品質 / 真空管はナショナル?」とアピールしているのですから、他社の真空管なんて使えません (笑) 。
6つの真空管が使われているようです。
おそらく「5球スーパー」という方式かと思われ、配置図には「6E5」が見当たりませんが、それが「マジックアイ」で、これも「真空管のひとつ」です。
「6E5 真空管」で検索すれば、「マジックアイ」の情報は容易に得られます。
スピーカーも「ナショナル」製で.....
このコンデンサーも「ナショナル」製。
この頃は「結構なお値段」でラジオを販売できたので、松下電器では主要パーツを自社開発製品で固めることが出来たのでしょう。
今では多くの家電製品は「安売り合戦」になり、世界で最も安い部品を探してきて、それをうまく使いこなして性能を確保し、「量産現場の賃金」「仕向地までの輸送コスト」「Made
in Japan でプレミアムモデルに出来るか」などを考えながら適切な場所で量産するといった方向かと思います。
また、PCに使う「CPU」とか、テレビ画面用の「有機ELパネル」などのキーパーツにおいては、「特定メーカーの寡占」が進み、自社の独自性/技術力をアピールできる製品を作るのが難しくなっているような気がします。
裏蓋は工具を使わなくても簡単に外すことが出来て、内部の金属部分に触れれば「場所に拠っては、感電しちゃうカモ」ですが、昔の機器は、こんな感じでした。
今発売されている「ACアダプタ経由ではなく、直接100Vに繋ぐ機器」で、工具無しで内部の回路に触れられるようなものはないと思います。
昭和31年に発売され、当時「¥15,300」だったようですが、今の値段なら「¥80,000~¥100,000」くらいかと思われ、テレビを購入するくらいの金額ですが、そういった値段で当時はラジオを購入していたのですね。
この頃は、どこの家庭にもテレビがあったわけではなく、「ラジオ」も主要な情報源のひとつだったのでは?と思いますが、台風とかで停電してしまうと、殆どの「真空管ラジオ」は動きません。
「乾電池で動くラジオ」が発売されるのには、トランジスタラジオの登場を待つことになったかと思われ、そこからは「SONY」が頭角を現すようになったようです。
「松下電器」の製品ですが、当時の英文表記は全部が大文字の「NATIONAL」。
現在の「Panasonic」になる前は、「N」だけが大文字の「National」でしたよね?
「MAGIC - SUPER」というのが製品の愛称でしょうか?
「マジックアイ」が付いて、「シングル・スーパー・ヘテロダイン」だから?
当時、周波数表示に使われる単位は、「kHz / キロヘルツ」ではなく「KC / キロサイクル」で表示されていました。
当時は「中波」のことを、「STANDARD BROADCAST」と呼ぶこともあったようです。
横幅は約500mmあり、一般的なオーディオ機器よりも大きいです。
木製の枠については「再塗装」されているかもしれませんが、「昭和31年の製品としては、良好な状態では?」と思います。
「マジックアイ」は、強い電波を受信すると明るい部分が大きくなります。
管理人が住んでいるような田舎ではなく都市部であれば、明るい部分が全開になるのかもしれません。
この個体では「離調時」にも結構光っていて、初期状態がこうだったのかは不明です。
左下に見えるインジケーターは「TONE」インジケーターで、「TONE」ツマミの設定によって光る場所が変わり、左端が「1 - MED」で、中間の音質特性。
その右が「2 - FULL」で、高域が伸び.....
その右が「3 - LOW」で、高域が減少。
この頃、音質については「連続可変」ではなく、切り替えだったのですかね?
「TONE」切り替えを「OFF」にすれば電源が切れ、電源スイッチも兼ねています。
なお、真空管が使われていますので、電源を「ON」しても、音が出てくるまでには「10秒程度」掛かります。
入手した直後は「えっ!もう壊れたの?」と焦りましたが、真空管下部にあるヒーターが温まるまでに時間を要しますからね。
ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー
でも、この機種の最大の特徴は「日本で初めての、アンテナが回るラジオ」ということで、「ジャイロット」という愛称も付けられていたようです。
前面の「ROT-ANT」ツマミを廻すと、バーアンテナを回転させることが出来ますが、オークションで数多くの「真空管ラジオ」が出品されている中で、管理人がこのラジオを選んだのも、ここがポイントでした。
これは、「ROT-ANT」ツマミを「反時計廻り」一杯に回したとき。
これは、「ROT-ANT」ツマミを「ほぼ中央」にセッティングしたとき。
アンテナは反時計回りに約150度くらい回転しているように見えます。
これは、「ROT-ANT」ツマミを「時計廻り」一杯に回したとき。
アンテナは反時計回りに、更に約150度くらい回転しているように見えます。
ざっと見たところ、合計で300度程度廻るように見えますが、当時の広告に拠れば「320度」回転するそうです。
中波の場合、電波の来る方向と直角になるようにバーアンテナを合わせると最も電波を受信しますし、混信しているような場合には、聴きたくない電波の来る方向と並行になるようにバーアンテナを合わせると、聴きたくない局の音を最小に出来ますから、中波の良好な受信のためには「アンテナが回せる」というのは、とても良いアイデアかと思います。
バーアンテナが回転するといえば、昭和40年代後半~50年代前半頃に、同じく松下電器から発売されていた「クーガNo.7」「クーガ115」「クーガ2200
(「にい にい まる まる」と読みました) 」などの「クーガ」シリーズの「ジャイロアンテナ」を思い出しますが、実はそれよりも10年以上前から存在していたのですね。
管理人が最初にこの機種をオークション上で見つけたときには「えっ、嘘?」と思いましたが、40年以上前の記憶が「上書き」されました。
「ホントに?」と思われる方も、動画を見れば「もう、信じるしかないでしょ? でしょ?」