SAEC (サエク) のヘッドシェルです。
酸化アルミニウムを焼結させたものですが、「白いヘッドシェル」というのは、他にはなかなか無く、黒いレコード盤の上では映えます。
但し、18gもあるヘッドシェルですので、このシェルを使うと重くなりすぎて適正針圧を設定出来なくなるプレーヤー/トーンアームは多いと思います。
このヘッドシェルですが、かつてSAECから発売されていたトーンアーム「WE-407/23」に標準装備されていたものです。
管理人の所有する「WE-407/23」は、アームのベース部と、キャビネットに固定する部材との間に、回転方向の「ガタ」が出てきていているので
(角度で云うと、2~3度くらい) 、ベースを「時計回り方向」に回したところで部材を追加し、「半時計回り方向」に戻るのを防ぐことで、「ガタ」を抑えています。
なお、音については、管理人が聴く限り「良好」に思えます。
ダブルナイフエッジというSAEC独自の軸受方式によるトーンアームは、今でもこの「WE-407/23」などで人気があり、かつてはYAMAHAのプレーヤー「GT-2000」に用意した特別仕様品もありました。
また、金属製のターンテーブルシート「SS-300」やターンテーブルデッキ「SBX-3」を発売するなど、「カチンカチン」が思想のようで、ヘッドシェル「ULS-3X」も、その考え方で作られたのでしょう。
「WE-407/23」のオプション品の中で、「一番重要」と管理人が思っているのが、補助ウエイトの「W-7M」(写真左)。
「メインウエイト」と「ラテラル・バランサーウエイト」のセットですが、標準装備のウエイト (写真右) に比べると、「直径が、やや小さい」ことが判ります。
標準装備のウエイトは、「WE-407/23」に始めから付いている「ULS-3X」(自重18g) を使うことを前提としているので、使用できるカートジッジの重量が「シェル」含めて23~33.5g。
頻繁にいくつかのカートリッジを付け替えたい方は、「ULS-3X」を複数持つか、他社の自重18g程度のシェルを用意する必要がありますが、ウエイトを「W-7M」に付け替えれば、使用できるカートリッジの重量が「シェル」含めて 15~25g となり、一般的なシェルに付けたカートリッジも使えますし、ortofonの「現行CONCORDE」のようなカートリッジ (シェル一体で18.5g) も使えるようになります。(オーバーハングの調整までは出来ませんけどね.....)
SAECのカタログに拠れば「WE-407/23」のオプションには、更に「W-7L」という補助ウエイトがありました。
(「W-7M」の「M」は「Medium」、「W-7L」の「L」は「Light」の意なのでしょうね?)
「W-7L」に付け替えれば 使用できるカートジッジの重量が「シェル」含めて6~10gになりますが、「W-7M」(15~25g) との間で、カバー出来ない重量域 (10~15g) があります。
どういうことなんだろう? これで良かったの? などと考えていましたが、ortofonから発売された「CONCORDE」シリーズの初代モデルで、1980年頃に発売された「CONCORDE 20」「CONDORDE 30」の自重は僅かに 6.5g しかなく、こういったカートリッジに対応するための補助ウエイトだったのかもしれません。
1979年の ortofon の総合カタログに拠れば、「CONCORDE 20」「CONDORDE 30」は、「カートリッジのローマス化を進めたもの」とのこと。
当時は「ローマス・ハイコンプライアンス・カートリッジ」というのも、トレンドのひとつだったように記憶しています。
「SAEC」にも、「WE-317」という「ローマス・ハイコンプライアンス・カートリッジ」を意識したトーンアームがありましたが、6.5gのカートリッジにまでは対応していなかったようで (対応範囲はシェル含み 14.5 ~ 21.0g) 、「SAEC」を代表する人気モデル「WE-407/23」は、全方位に対応したのでしょうか?
ところで「SAEC」って、何の略なんでしょうかね。「A.E.C.」というのは、Audio Enginnering Corp.のことだと思われますが、「S」が何を意味するのかわかりませんでした。
「Superior (上級の) 」とかを表すのかも?とも思っていましたが、先日オークションに出品されていた WE-308L / WE-308NEW
の取説によれば、「Sound of Audio Engineering Corp」のことのようです。
さて、これは「インサイドフォース」をキャンセルするための「キャンセラーウェート」ですが、ヤフオクなどの出品物では、これが欠品だったりすることもあります。
重量は「約6g」ですが、「糸で引っ掛けて垂らしているだけ」ですので、同じくらいの重量のモノを作って代用しても、音質には影響ないかもしれません。
なぜ「インサイドフォースが発生するのか?」というと、回転するターンテーブルに針を載せたときには、下図の「F」の力が針先に働きます。(大きさは「針圧」に比例して変わりますし、線速度でも変わるような気がします。)
「F」は「F1」と「F2」に分解して考えることが出来、「F1」はアームを支点から離れる方向に引っ張る力、「F2」はアームを内周側 (時計回り)
に回転させようとする力になります。
「F2」が大きいと、内側の音溝に対しては針圧が増加し、外側の音溝に対しては針圧が減少することになるので、それをキャンセルする機能が付いているのだと考えています。
針圧に合わせたキャンセラーバーの適切な位置 (一番下の赤い線が0g、そこから0.5gステップで最大3g) に、キャンセラーウエートに付いている糸の輪を引っ掛け、レコード盤の最外周に針を置いたときに、糸がアームと直角になるように合わせます。
こうすることで、アームに「反時計廻り」の力が加わり、インサイドフォースをキャンセル出来る仕組みと考えています。
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現在SAECからはトーンアーム/ヘッドシェルは発売されておらず、ケーブルなどが主力製品になっています.....と思っていましたが、2019年4月末に「WE-4700」というトーンアームが発売されたようです。
「実効長」「オーバーハング」などが「WE-407/23」と同じ寸法のため「取付位置」が同じになり、更に「穴径」も同じですので、「WE-407/23」が付いていたプレーヤーに「そのまま付け換えられる」ようです。
ちなみに「WE-407/23」の「/23」というのは、「アームの有効長:233mm」を表すものと思っていますが、「有効長」=「実効長+オーバーハング」の関係にあるようで、「実効長」というのは、アームを適正位置に取り付けたときの「アームの回転中心」から「ターンテーブルの回転中心」までの距離。
「オーバーハング」については、こんな「マニアックなサイト」に辿り着いた方に、説明の必要はありませんよね?
なお、「WE-4700」に付くヘッドシェルは「酸化アルミニウム」を焼結させたものではなく、「ジュラルミン製」で「銀色」のものになるようです。
形状が似ていて、取り付け位置に関して互換性があるものの、「復刻モデル」ではなく、加工精度は大幅に向上しているようで、「WE-407/23」が¥67,000だったのに対し、「WE-4700」は¥1,119,000です。
「WE-407/23」なら管理人が持っているターンテーブル ( MICROの「BL-91」) にも価格的に釣り合いますが、「WE-4700」を買うのなら、ターンテーブルも「100万円クラス」のものにしないと釣り合わないですね
(笑) 。
更にアンプもスピーカーも、「もう1桁高価な製品」にしないと釣り合いません。
「¥1,199,000」ぢゃなく「¥119,900」だったら、管理人にもギリギリ手が届きそうですが.....
またまた余談ですが、月刊誌「Stereo」の2019年5月号で知ったのですが、SAECのトーンアームの型番は「足すと11」になっているとか.....
たしかに「308」「317」「407」「506」「4700」いずれも当てはまりますね。
YAMAHAの「1000番」とか、SONYの「777」みたいに、「足すと11」というのが、SAECの「栄光の型番」あるいは「ラッキーナンバー」なのでしょうかね?
なお、例外として、「WE-8000/ST」というストレートアームの機種があったようです。