二層塗りとエピタキシャル

 「二層塗り」と聞いて、管理人が最初に思い浮かぶのが、SONYの「DUAD」です。「コンパクトカセット」だけでなく「エルカセット」や「オープンリールテープ」、更には「録音済みのミュージックカセットテープもあったようです。
 クロームテープの持つ高域の伸びやS/Nの優位性に、中低域の厚みが加わったもののようですが、「二層塗り」というのは、SONYだけではなく、DENONの初代「DXシリーズ」や、富士フイルムから発売されていた「FX DuO」「Range-6」、TDKの「SA-X」などがありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 また富士フイルムから「AXIA」ブランドで発売された「J'z 2」などで、「ダブルコーティング」という記載がありました。

 

 録音時間については、13ものバリエーションがあったようで、お店も大変だったでしょうね。

 

 

 また、「Scotch」から発売された「CLASSIC」というカセットも「20,000Hzに挑戦する2層コートカセット」とアピールされています。
 ちなみに「CLASSIC」ですが、ベートーヴェンやモーツァルトのような「クラシック音楽」を意味するだけでなく、「第一級の」「最高の」といった意味も持つ言葉です。
 でもちょっと前の「iPod Classic」とか「Classic Pentium」などは、「第一級の」「最高の」いった意味での使い方ではなかったですね。

 

 

 

 一方、それらとは異なるアプローチで「2つのものを融合した」のが、maxellの「エピタキシャル磁性体」と呼ばれるもので、中低域の感度・出力が高い「ガンマヘマタイト」を核に、高域の感度・出力が高い「コバルトフェライト」をまわりに結晶させたもの、とのこと。

 

 管理人はカセットテープの開発/製造に関与したことがありませんので、「二層塗り」と「エピタキシャル」のどちらが「安定して量産するのに、より高度な技術が必要」なのかは判りませんが、カセットテープの高性能化に関しては「対称的なアプローチ」だったのかと思っています。

 

 

 さて、「2つのものをひとつにした」というと、「ハイブリッド」という言葉もありますね。
 「ハイブリッド」と云うと、最近では「ガソリンエンジン」と「バッテリー / モーター」を使った「ハイブリッド車」のことを指すことが多いですが、過去には、「アナログ表示」と「デジタル表示」が組み合わされた時計や、「MOS-FET」と「真空管」の両方が使われた ALPINE/LUXMANブランドのプリメインアンプ「Brid」シリーズなどがありました。
 家電品等の世界では、原理的に異なる2つのものを一体化させることで、より価値を高めたようなものを「ハイブリッド」と言うようですね。
 あと、「幅広く認知された世界」ではないですけれど、「男のコ」的な要素と「女のコ」的な要素を同時に備えたような人のことも「ハイブリッド」と云うこともあるみたいです。

 一方、「エピタキシャル」というのは、半導体を製造するときなどの技術用語で、結晶の上に別の結晶を成長させるような場合に使う言葉のようです。

 

 

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 でも、その後「メタルテープ」が登場して、「2層塗り」も「エピタキシャル」も、「ハイエンドテープの座」を奪われてしまいましたね。

 メタルテープの第1号 (Scotchブランドの「METAFINE」) が登場したときですが、各社のカセットデッキは、まだ対応が出来ていなくて、「ハード (デッキ) よりソフト (テープ) が先行」といったような記事もあったように記憶しています。

 

 当時は、NECのパソコン「PC-9801シリーズ」や任天堂の「ファミコン」が登場する前で、管理人もコンピューターなんて使ったことがありませんでしたから、「ハード」「ソフト」なんて初めて聞く言葉で、なんで、「硬い」とか、「柔らかい」といった表現をするのが判らなくて、聞き慣れない言葉だったことを記憶しています。
 今「ソフト」といえば、コンピューターやゲーム機で使うソフトウェアを指す場合が多いですが、映画や音楽などが収録されたメディアも「ソフト」です。

 

 

 

 この頃、近くの店にはScotchブランドのカセットテープは置いてなかったのですが、このテープのパッケージだけはFM誌などでよく見ましたので、強く印象に残っています。
 でも、インデックスカードの一部がくり抜かれているのは、Scotchブランドのカセットテープの中でも、このMETAFINEだけだったのかもしれません。

 

 

「世界初のメタルテープ」ということもあってか、解説にかなりのスペースが割かれています。

 

 

 インデックスカードに穴が開いていますが、曲目を記入して使う場合には、下の写真で示す「上半分だけ」を使って使用するようです。

 

 

 

 メタルテープが出る頃、「酸化していない金属を使っている = 酸素が無い分だけ単位面積あたりの金属分が多く、高出力」と管理人は理解していて、「アルミホイルみたいな、ピカピカのテープ」を想像していましたが、テープ面の見た目は「ほぼ真っ黒」で、他のテープと大きな違いはありませんでしたね。

 当時、メタルテープに対応したデッキを持っていないのに、テープだけ先に買ってしまい、録音したものが完全には消えず、「やっぱり、こうなるのね」と思った記憶があります。
 ちゃんと、「メタルポジションのついていないデッキでは使用できません」と、記載されています。

 

 

 当時の角ばった独特の「Scotch」や「3M」のロゴが懐かしいですが、下の写真は更に昔のものと思われ、「Scotch」の字体がやや縦に長く、線が細いように見えます。

 

 「タータン・チェック」も、当時の「Scotch」ブランドのテープによく使われていたデザインだったかと思います。

 

 

 「3M」とは「Minnesota Mining and Manufacturing Co.」のことで、「3M」を扱う日本の会社は、かつては「住友スリーエム株式会社」でした。
 今は「スリーエム・ジャパン」で、「Scotch」「3M」のロゴも丸みのあるものに変わっていますが、ここでも「タータン・チェック」が使われています。

 

 「タータン・チェック」は、今も昔も「3M社のアイデンティティ」なのでしょうね。

 

 

 

 「METAFINE」発売の後、maxelから発売されたメタルテープには「メタキシャル」という名前が付いていました。
 これは「メタル」と「エピタキシャル」を合わせて作った、maxellの造語では?と思います。

 

 

 

 メタルテープ登場後のカセットデッキの対応状況ですが、新規開発された機種がある一方で、高級機種では、TEACの「C-1 MkII」や、YAMAHAの「K-1a」のように「既存の機種をメタル対応させたもの」といった形で発売されたものもありました。

 

 メタルテープに対応する際には、TEACの「C-1 MKII」や、YAMAHAの「K-1a」では、「Fe-Cr」ポジションがなくなって、「METAL」ポジションに置き換えられましたが、「フェリクローム」テープを発売していたSONYのデッキなどでは、「Normal (TYPE I) 」「CrO2 (TYPE II) 」「Fe-Cr (TYPE III) 」に「METAL (TYPE IV) 」が追加され、4つのポジションが用意されていました。

 

 

 但し、SONYのカセットデッキにおいても、後のものでは「ポジション切替スイッチ」がなくなり、検出孔を用いた自動切替になっていきましたが、その際「フェリクローム (TYPE III) 」テープには対応しなくなりました。
 なお、「TYPE **」といった表記は、メタルテープが登場した頃から、SONYのカセットテープやカセットデッキで使われるようになったと記憶していますが、SONY以外で表記したメーカーは少なかったように思います。

 

 

 

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